新・ことば事情
6260「未遂と失敗」
きょう(2月15日)の「ミヤネ屋」の放送の中で、以前「オウム真理教」が、「幸福の科学」の大川隆法総裁の暗殺を企てたことがあって、実際に毒ガスの「VXガス」を大川総裁の車に散布したが、失敗に終わったのだそうです。それを指して、
「VXガスを散布したが、未遂に終わった」
との表現が、フリップに出て来たのですが、違和感が。
「未遂」というのは、まだ、
「行う前」
のような気がします。すでに毒ガスを散布しているのだから「未遂」ではなく、
「失敗」
ではないか?と思ったのです。しかし、
「自殺未遂」「殺人未遂」
などの表現はありますし、これらは、
「実際に行為を行って、失敗した場合」
に言います。この違いは何でしょうか?
考えました。
結論は、「行った」場合には、
*「未遂」=行為(自殺・殺人など)
*「失敗」=計画(暗殺・殺害計画など)
と使い分けているのではないか?また、
「まだ行為を行っていない場合」
は、やはり「未遂」ですね。
そして「計画」が「未遂」で潰(つい)えてしまった場合には、
「失敗」
も使えると思います。いかがでしょうか?
そして、この言葉の違いを考えていて思いが及んだのは、今、国会で問題になっている、
「共謀罪」
についてです。これまでの犯罪の「殺人」「詐欺」などは、実際に行動に出たが、目的を達することができなかった場合に、
「殺人未遂」「詐欺未遂」
などの「未遂」の罪があります。つまり、
(1)「計画」
(2)「実行」
(3)「結果」
のうち、(1)(2)まで行って(3)が失敗した場合が、「未遂」になっています。
これを見ていて、よくビジネス関係で出て来る、
「PDCAサイクル」
を思い出しました。「PDCA」とは、
「Plan(計画)」→「Do(実行)」→「Check(評価)」→「Act(改善)」
の4 段階を指します。
この「(2)実行」にまで行かなくて、
「(1)計画」
をしただけで捕まる恐れがあるのが「共謀罪」です。もちろん、
「悪いことを計画した場合」
ですが、この、
「悪いこと」
というのが具体的に何を指すのかが問題です。
そこが「恣意的」に、権力を持つ政府側が決められるということになると、一般市民にとっては自由を制限される非常に危ないことになるということです。
もちろん、「他人の命を奪う」「他人を傷つける」ような計画は、有無を言わさず「悪いこと」ですが、それ以外の意見が分かれているような問題に関して(たとえば沖縄の米軍基地の問題や難民の問題など)、政府側から、
「敵=悪いヤツら」
と認定されると、非常に危ないです。
とここまで書いて、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)委員長の異母兄である、
「金正男(キム・ジョンナム)氏」
が、マレーシアのクアラルンプーリュ国際空港で"暗殺"された事件で、実行犯と見られる2人目の女が捕まったというNHKの夜7時のニュースの中で、凶器は、
「『VXガス』ではないか?」
という見方を放送していました。
ここにも出て来たか、「VXガス」!
以前から、オウム真理教や北朝鮮のテロ行為の際に出て来た毒ガスですね。こわいです。こんなのは事前に取り締まってほしいと、誰だって思います。こういう自然な気持ちは良いのですが、ねえ。