新・ことば事情
6256「65代のアクセント」
初場所で大関・稀勢の里が初優勝を果たし、「横綱昇進」も決めました。3代目若乃花以来、19年ぶりの、
「日本出身横綱」
の誕生になりました。
さて、その稀勢の里は、
「第72代横綱」
になるわけです。この「○○代」のアクセントの中でも「1ケタ」が「5」の場合は、たとえば
「65代」になると、(65代=貴乃花)
「ロ/クジュー・ゴ/ダイ」
と「5代」部分のアクセントが、
「ゴ/ダイ」
と「平板アクセント」になるのが正しいと私は思います。ところが最近よく、
「ロ/クジュー・ゴ\ダイ」
というようなアクセントを耳にします。「5代」部分のアクセントが「頭高アクセント」になっているのですね。なぜこうなるのか?考えました。
「●代」
という数詞と助数詞のアクセントを1から順番に見ていくと、
「イ/チ\ダイ」(1代)
「ニ\ダイ」(2代)
「サ\ンダイ」(3代)
「ヨ\ンダイ」「ヨ/ダイ」(4代)
「ゴ/ダイ」(5代)
「ロ/ク\ダイ」(6代)
「ナ/ナ\ダイ」(7代)
「ハ/チ\ダイ」(8代)
「キュ\ーダイ」「ク/ダイ」(9代)
「ジュ\ーダイ」(10代)
ということで、「ゴダイ」と同じ「3拍」のもののアクセントを見てみると、
「ニ\ダイ」(2代)
「サ\ンダイ」(3代)
「ヨ/ダイ」(4代)
「ゴ/ダイ」(5代)
「ク/ダイ」(9代)
となっています。このうち「4代」「9代」は、普通は、
「ヨ\ンダイ」「キュ\ーダイ」
ですから、それを除くと、
「ニ\ダイ」(2代)、「サ\ンダイ」(3代)
は、共に「頭高アクセント」ですよね。だから「5代」も、それにつられて(引き付けられて)「頭高アクセント」で、
「ゴ\ダイ」
になってしまうのではないか?と考えました。
それともう一つは、飛行機の「便数」を数えるときに、
-
便名
-
合計便数
によってアクセントが変わる傾向があります。例えば、「5便」のアクセントには、
「ゴ\ビン」(頭高クセント)
「ゴ/ビン」(平板アクセント)
の2種類がありますが、
(1)便名=「ゴ/ビン」(平板アクセント)
(2)合計便数=「ゴ\ビン」(頭高アクセント)
という傾向があるのではないでしょうか?
こういった「2種類のアクセント」がある助数詞につられて、「頭高アクセント」を選択してしまうのではないかな?と思いました。
しかし!
去年5月に新しく出た『NHK日本語発音アクセント辞典』の巻末に載っている「数詞と助数詞のアクセント」の一覧表で「代」について見てみると、なんと、
「ゴ\ダイ」
という「頭高アクセント」を2番目に認めているではありませんか!
もちろん最初に載っているのは、
「ゴ/ダイ」
という「平板アクセント」ではあるのですが。
「ゴ\ダイ」
というアクセントは、なんか気持ち悪いんだよなあ・・・。
『宇宙戦艦ヤマト』の主人公「古代守」の「古代」なら
「コ\ダイ」
でいいんだけどなあ・・・・。
ちなみに飛行機の便数の、
(1)便名=「ゴ/ビン」(平板アクセント)
(2)合計便数=「ゴ\ビン」(頭高アクセント)
という傾向があるのではないか?ということに関しても、『NHK日本語発音アクセント辞典』の巻末に載っている「数詞と助数詞のアクセント」の一覧表に、載っていました。
「便」の「備考欄」には、
「航空機などの便名の場合は、平板型(2単位語の場合は、後部要素が平板型)が推奨型」
とありました。ちょっとわかりにくいけど、その上の一覧表を見ると「1番目のアクセント」は「中高アクセント」か「頭高アクセント」で、
「イ/チ\ビン」「ニ\ビン」「サ\ンビン」「ヨ\ンビン」「ゴ\ビン」「ロ/ク\ビン」「ナ/ナ\ビン」「ハ/チ\ビン」「キュ\ービン」「ジュ\ービン」
となっていて、「2番目のアクセント」として、全て「平板アクセント」が載っているので、その使い分けとして、
「便名」
の場合は、
「イ/チビン」「ニ/ビン」「サ/ンビン」「ヨ/ンビン」「ゴ/ビン」
「ロ/クビン」「ナナ/ビン」「ハ/チビン」「キュ/ービン」「ジュ/ービン」
と「平板アクセント」のほうを、
「推奨」
しているということです。逆に言うと、
「『便名』でない場合=『便数』をいう場合」
には「頭高アクセントを推奨」ということになるんでしょうね。