新・ことば事情
6250「シャンペン」
1月14日放送の日本テレビ「嵐にしやがれ」で、銀座の「シャンパン鍋」の店の人が、
「シャンペン」
と2度言ったら、2度とも、会場の若い女性観客から笑い声が起こりました。
「『シャンペン』ではなく『シャンパン』が正しい。『シャンペン』は訛っていて間違い」
と彼女らは思ったのでしょう。しかしそれは、
「半分正しく、半分間違い」
ですね。
昔は「シャンペン」と言ったんですよ。たぶん「耳から入った外国語」としては「シャンペン」と聞こえたのでしょうね。でも「原産地」の名前が、フランスの、
「シャンパーニュ地方」
なので、そこから「シャンパン」が定着していったのでしょう。
グーグル検索では(2月10日)
「シャンペン」=144万件
「シャンパン」=705万件
でした。『三省堂国語辞典』は「シャパン」が見出しですが、その意味説明(語釈)の中に、「シャンペン」も出て来ます。『広辞苑』も同様で、見出しは「シャンパン」ですが、「シャンペン」も「空見出し」で載っていて。「シャンパン」の語釈の中には「シャンペン」も出て来るほか、
「サンパン」
というのもありました。さすがにこれは、現代では使われていないと思いますが。一応「サンパン・シャンパン」で検索してみると、
「サンパン・シャンパン」=6010件
ありました。その中の「京都吉兆」のHPでは、作家の村松友視さんが、
「シャンパーニュの魅力」
という文章を書いていました。村松さんは、京都・嵐山で会席料理とシャンパーニュのマリアージュを味わいながら「アンリ・クリュッグ」さんとお話ができるという機会に恵まれたそうです。「クリュッグ」というのは私でも知っているシャンパンの銘柄です。その当主なんでしょうね、アンリさんは。
そして、村松さんは、「ワイン」に関するある書物に付いて語っています。
「ワイン通の人々が時おり引用する山本千代喜著『酒の書物』である。昭和15年すなわち1940年の発刊で、西洋における古今の酒に関する文章を網羅した趣のアンソロジーといった内容になっている。(中略)有名な三ツ矢サイダーの腹に貼られたラベルに、三つの矢が組み合わされた図柄があり、そこに"シャンペン・サイダー"なる文字があしらわれていた。これを味わったのが、私の"シャンペン"体験の原点というお粗末だが、『酒の書物』はそんな時代に先んじること九年、というより日本が第二次世界大戦に突入せんとする空気の中で出版されているのだ。(中略)『酒の書物』には"シャンペン"と表記されており、シャンペン、サンパン、シャンパン、シャンパーニュ・・・・この呼称の移り変わりの中に、日本という土壌にシャンパーニュ産の白ワインが浸透してゆく色合いが感じられて面白い。』
やっぱり昔は「シャンペン」だったんですね。歴史ある表記なのです、「シャンペン」は。