新・ことば事情
6240「どべ」
1月19日の読売新聞連載「ポケモンといっしょにおぼえよう たのしい方言」で紹介されていたのは、
「どべ」
という言葉でした。「広島県の方言」で、意味は、
「どろ(泥)」
なのだそうです。私はこの「どべ」という言葉を見て、
「最下位」
の意味だと思いました。子どもの頃、背は高かったのですが太っていたので走るのが遅く、運動会ではいつも最下位で、
「どべ」「どべた」
と言われ続けていたので、よく覚えている言葉です。
私のこういった子どもの頃の言葉は、「三重県伊賀上野」「愛知・名古屋」「大阪・堺」あたりで培われたものですから、「広島」とは、同じ「どべ」でも意味が違うのでしょうね。
もしかしたら「泥」の意味の「どべ」が「最下位」に影響を与えているのでしょうか?
「泥が付く」
とかそういった感じで。その辺りについてちょっと考えた時に、「どべ」は、
「どんべ」
とも言ったことを思いだしました。「『どべ』の強調語」が「どんべ」「どべた」(「どべた」は「侮蔑」のニュアンスもある)だと思います。そうそう、
「べった」
という言葉もありました。これも関係あるでしょう。
そうすると、もしかしたら「どべ」は「べった」に「強調の『ど』」が付いたのではないか?しかも、そもそも「べった」の「た」は、
「~の人」
という意味がありそうな接尾語っぽいので、「意味の幹」となる言葉は、
「べ」
です。・・・・あ、そうか、「べ」は、標準語の、
「ビリ」
を早く言った時に「べ」と聞こえなくもない。もともとは「ビリ」が語源なのではないか?というところまで、たどり着きました。この間(これを書きながら)約10分です。
「ビリ」の語源は何か?「一番最後」ということであれば、
「ビ=尾」
が関係しているかもしれません。ここで『精選版日本国語大辞典』を引いてみましょう。
・・・うーん「語源」は載ってないな。でも「尻」に関係していますね。ということは、
「尾=尻」
という関係かもしれません。「どべ」も引いてみましょう。「最下位」の意味は載っていませんでしたが、
*「どべ(土辺)」地の上、地べた
というのがありました。これは広島県方言の「泥」の意意味の「どべ」に関係するかもしれません。また、「順位の上位」を「天」「空」のように「上の方」と考えると、「最下位」は「地べた」に近い感じなので、意味的には通じる所があるようにも思います。
「地べた」は「どべた」と共通の「べた」がありますが、「べた」は「辺」「あたり」の意味なんですね。「道端」の「ばた」も「べた」に似ています。「炉端」も。「はた」も「へた」から来て、連濁して「ばた」になっているのかも。
あ、「べた」と言えば、
「すべた」
という言葉がありましたね!これは何と、
「(トランプの)スペード」-
のことだと知った時にはビックリしましたが。(語源はポルトガル語のespada。元来はカルタ用語で「剣」の意)「侮蔑語」の、
「このスベタ!」
ぐらいでしか見たことが無かったので。この「すべた」の「べた」も意味は同じかも。「す」は、もともとは「素」でしょう。
いやあ、頭の体操になって、半世紀前、子どもの頃から疑問に思っていた「どべ」「どべた」の謎が解けたたような気がしました。
あしたも、読売新聞の「ポケモンといっしょにおぼえよう たのしい方言」、読まなきゃ!