新・読書日記 2017_010
『消えるコトバ 消えないコトバ』(外山滋比古、PHP研究所:2016、7、14)
ものすごく字が大きい新書。すぐに読めるなと思ったが、意外と(文字数は少ない分?)含蓄が深く、読むのに時間がかかる。「硬くて大きな食べ物は、よく噛まないと食べられない」ようなものか。新書なのに、最初の16ページはとってもきれいで印象深いカラー写真と、まるで詩集のようなコトバが記されていて、工夫を凝らした一冊。
しかし、タイトルは内容に合っていない。内容に合わせると、
「アウトサイダー思考のすすめ」
とか、そんな感じである。繰り返し、繰り返し「アウトサイダーとインサイダー」について語られている。
*「文藝はインサイダー文学として発足し、歴史を重ねているうちに象徴に達する」(106ページ)
*「作者尊重の思想は文献学より古く、十八世紀のはじめ(一七0九年)に、著作権法(コピーライト法)という特典を、作者、著作権に与えた。これが現在も拡大、適用されているのである。作者はつねに正しく、それ以外のものの借用、改編を認めない著作権法は、作者、著作者にとっては好都合であるが、読者のことはほんのすこししか考えない。読者には、ものを言う余地がない。読者に当たるものが作成する版本は、原本に比べて、価値が無いのは当然という常識を生んだ。」(120ページ)
*「伝統はインサイダーによってつくられるが、発見はアウトサイダーのはたらきであるということを、自己中心の人間が亜理解するのは容易ではない。」(180ページ)
*「舞台の芝居を客席で観る人のことを、第四人称と呼んだことにあやかって言うならば、発行後、何年、何十年もしてから読むのは、第五人称的読者であると考えることが可能である。」(203ページ)
*「アウトサイダー言語論、アウトサイダー文化論は新しい思考であると考えている。」(215ページ)
勉強になりました!
(☆4つ)