新・読書日記 2017_0008
『新・敬語論~なぜ「乱れる」のか』(井上史雄、NHK出版新書:2017、1、10)
元東京外国語大学教授・元明海大学教授で、現在NHK用語委員の井上史雄先生と言えば、以前、『敬語はこわくない』という本を出されていて、読みましたが、もう20年位前の話になっちゃうのかな。それで、「2017年の現在」における敬語の現状について、改めて筆を執られたと。しかも今回は、データに基づいた分析ということで、ちょっと学術的でもある。前回は「普及版」っぽい新書だったので。
でもグラフが結構ややこしくて難しい。これは、もっとわかりやすいグラフを、一部使った方が良いなあと思ったところもありました。
勉強になったのは、「所有物敬語」「所有傾斜」と呼ばれる傾向が出て来ていること、「尊敬語より謙譲語の使い方が難しいが、共に暗記するのが一番効果がある」など。
ショックを受けたのは、もう大分以前から(関西にはまだちょっとと残っていたが)「ウ音便」(「おいしゅうございます」「危のうございます」など)が消えてきたことには気付いていたのだが、それは「『ですます体』の確立」によるものであるということ。「ですます体」が「敬意低減の法則」で、話し言葉や文章語に進出してきたと。そうか「ございます体」が消えて、「ですます体」が「敬語」になってしまったということなんですね!それに伴って「ウ音便」が消えたのか!ショック。(67ページあたり)
また「ございます体」の名残りは「~してございます」だと言う。「でございます」は、前に名詞(体言)が来るが、動詞や形容詞や形容動詞(用言)が来ると「~してございます」になるんだな。
そして「だ・である体」と「ですます体」の中間の形として、
「っす」「っしょ」「っした」
が普及したと。これらは、
「中間敬語」「後輩口調」
とでも呼ぶべき存在であると、井上先生は捉えてらっしゃいますが・・・単なる若者言葉のちょっと手抜きな敬語じゃないの?これが今後、「敬語」に進化していくんですか?やだなあー。観察しないといけませんね。思わず私のキライな「マジか!」と言ってしまいそうな・・・。
また、皆から嫌われる「マアニュアル敬語」も、井上先生は評価している。「よろしかったですか」も「になります」も婉曲表現で「気配り」なのだと。特に「になります」は「にあたる」という意味で「こちら叔父になります」のような言い方は、以前からあった。確かに、それだと違和感はない。しかし、それが飲食店で使われると、やはり違和感がある。井上先生も「乱用しない方がいい」とクギを刺していた。
とにかく、勉強になる楽しい一冊です。