新・読書日記 2017_005
『いつかの夏~名古屋闇サイト殺人事件』(大崎善生、角川書店:2016、11、30)
あの事件から、もう10年になろうとしているのか・・・。2007年8月24日、名古屋で起きた「闇サイト殺人事件」。インターネットの「闇サイト」で、「闇の仕事」を募って集まった「顔も見知らぬ男たち」が企てた強盗事件。共通しているのは「金が欲しい」だけだった。ちんけな盗人たちが、「俺の方が、もっと悪いぜ」と見栄を張っている間に「金を奪うなら、相手を殺しても仕方がない」というように、その気持ちが「一線」を超えて行く。そこに、何の落ち度もない31歳のOLが、まさに「たまたま」標的となり、無残な殺され方で命を落としてしまう。彼女が、そして残された彼女の母が、どう生きて来たかを丹念に追うことで、この犯罪の残虐さ、浅はかさ、またこういった事件を繰り返させてはならないという著者の気持ちが、伝わってくる。
殺される恐怖と闘いながらも、犯人たちに「銀行の暗証番号を教えろ」と脅されても、決して屈しなかった被害者・磯谷利恵さん。犯人たちに伝えた、偽の暗証番号「2960」。それは、死の間際にあっても、決して犯人たちに屈しなかったことを証明する番号であったことは、恋人が証明してくれる・・・。
本書のタイトル「いつかの夏」は、磯谷利恵さんが心から愛したGLAYの曲『いつかの夏に耳をすませば』というタイトルから抜粋したという。
star4_half