2017_002
『芥川症』(久坂部羊、新潮文庫:2017、1、1)
タイトルは、いわずもがな「芥川賞」のもじりだが、本書に収められた7編の短編小説も、
全て「芥川龍之介」の作品名をもじったもの。
「病院の中」(←「薮の中」)
「他生門」(←「羅生門」)
「耳」(←「鼻」)
「クモの意図」(←「蜘蛛の糸」)
「極楽変」(←「地獄変」)
「バナナ粥」(←「芋粥」)
「或利口の一生」(←「或阿呆の一生」)
である。いわゆる「パステーシュ」「パロディ」といった感じの作品。好きである。パスティーシュというと清水義範を思い浮かべるが、これは若い頃の筒井康隆を彷彿させる作品(特に「病院の中」)だった。
著者の本業が「外科医」ということも、特に「病院の中」には反映されていると思う。医師でありながら、医師と患者さんとの世界の乖離に疑問を持つ「第三者の視点」がなければ、このような作品は書けないだろう。また「大阪出身」というのも「笑い」の視点を持っている理由かも。(笑い=自分をも第三者の視点で客観的に見られる=自分を笑いの題材にできる)今後も注目していきます。