新・読書日記 2017_004
『トランプは世界をどう変えるか?』(エマニュエル・トッド&佐藤優、朝日新書:2016、12、30)
年末の「12月30日」付で緊急出版。まあ、続々とトランプ本が出版されていますが、「佐藤優」「エマニュエル・トッド」という著者への信頼性において購入。
全部で173ページしかない薄い新書。そのうち前半の10~36ページが、トッド。ただし、書かれたたものではなく、朝日新聞の大野博人編集委員がインタビューしたもの。タイトルは「民主主義がトランプを選んだ」。短すぎるよね、これ。羊頭狗肉。
そして、38~61ページまでは、トランプ氏の「共和党候補受諾演説」(2016年7月21日)を資料として載せている。いいけど、「水増し感」、ありあり。
そして64~163ページとあとがきは佐藤優が書いている。という意味では佐藤優の本だ。そこに書かれたことは、
・安倍総理は、外務省の「読み違い」に怒っていた。
・5月にキッシンジャーがトランプと面談したことが、「戦争NO」というキッシンジャーの姿勢を表した=「クリントンNO」という形。
・トランプはbeing―「在る」という静止した状態ではなく、becoming-「生成する」というダイナミズムを重視していて、ヘーゲリアン(ヘーゲル主義、ヘーゲル学派)的な考え方。
・トランプ以後のアメリカを見極める3つのポイントは、
(1)1941年12月7日より前のアメリカ、つまり非介入主義への回帰
(2)FBIの政治化による自由と抑圧のせめぎあい
(3)国内の敵探しが始まる危険な兆候
・「ラインホールド・ニーバー」(1892-1971)=アメリカの新正統派(ニュー・オーキドクシー)と呼ばれる潮流の神学者に注目。=ニーバーは「デモクラシーの理念こそが、自由と平等、両者の間に生まれる矛盾を解消する。一般的には『友愛』として知られる概念がそうだ。しかし、『友愛』をうまく機能させることは非常に難しい。聖書のルカの福音書にある「不正な管理人」に出て来る「闇の子」(=道徳的シニックス=冷笑家)と「光の子」(=私的利益を、より高い律法のもとに従わせなければならないと信じる人)との闘い。
・トランプは「赤狩り」のマッカーシーに似ている。マッカーシズムは「不安の時代」を背景に成立した。アメリカの病理。
・ヒラリー・クリントンのメール問題を、なぜ最後の最後までFBIが引っ張ったのか?クリントンが大統領になると、メール問題を追及しているFBIは徹底的に潰されてしまうから、その前にクリントンの大統領になる芽を潰しておこうという、という意図であった。
うーん、勉強になりました。