新・ことば事情
6226「『じいじ』と『ばあば』」
最近、「おじいちゃん・おばあちゃん」のことを、
「じいじ・ばあば」
と呼ぶ傾向があります。これに関しては7年前に、2010年版の『現代用語の基礎知識』に書きました。その原稿を引用します。
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「祖父、祖母」のことを「じいじ、ばあば」と呼ぶ幼児語を、子供だけでなくその両親や祖父・祖母自身が「じいじ、ばあば」と言う傾向がある。国立国語研究所が2009年3月、全国で803人に「じいじ」「ばあば」という言葉を使うことがあるか調査したところ、「ある」と答えた人は約24%だった。この言葉は首都圏と東海地方を中心に使われており、特に首都圏の50代以下の女性が突出して使っている。父母のことを「パパ、ママ」と呼んだ場合、祖父母の対になる呼称がないために、響きの優しい「幼児語」を持ってきたのかもしれない。中にはこの呼び方に違和感を持つ人もいる。2008年8月23日の読売新聞YOMIURI ONLINE「発言小町」に、「子供に、祖父母を『じぃじ』『ばぁば』と呼ばせることにとっても抵抗がある」という30代半ばの母親が投稿している。この人の実母も「孫に"ばぁば"と呼ばれるのは抵抗がある。ちゃんと"おばあちゃん"と呼んでもらいたい」と言っているという。この投稿に同意する書き込みも複数されている。
2009年7月1日の朝日新聞のネット記事には、国立国語研究所の調査を取り上げた上で、『広がった明確なきっかけは不明だが、朝日新聞では「ひととき」欄などで80年代から使われている。04年にはNHKのテレビドラマ「ジイジ 孫といた夏」が放映され、西田敏行さんの「ジイジ」役が好評で、「じいじ」「ばあば」の普及に一役買ったようだ。』と記されている。読売新聞では「ばあば」は1991年8月の投稿記事「ばあばの作った野菜」が初出。一方「じいじ」は、「じいじい」の形では1999年10月に四国の小学5年生の書いた作文「じいじいとさぬきうどん」が記事になった時に出てくるが、「じいじ」の形では2002年4月、鹿児島の動物園の飼育員(57)が初孫に「じいじ、コアラは元気?」と話しかけられるシーンの記事で初めて出てくる。2009年8月の読売新聞夕刊「いやはや語辞典」では高井有一氏が「"ぢいぢ""ばあば"目尻下がる不思議な響き」として取り上げている。
国語辞典では2007年秋改定の『広辞苑・第6版』にじは「じいじ=(ジジの長音化)祖父を親しんで呼ぶ幼児語」として載っている。(「ばあば」も同様)第4版、5版には載っていない「新語」。少子化で子ども(幼児)目線に立ちすぎて出来た言葉か?自分の息子を「王子」、娘を「姫」と呼ぶ風潮とも連動している可能性がある。育児関連の雑誌が起源だという説もあるようだ。
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と、ここまでが、これまでの「基礎知識」。さて、きょう(2016年12月29日)の日本テレビお昼のニュース番組『ストレイトニュース』では、お正月休みを故郷で過ごそうという人たちの帰省ラッシュのニュースを伝えていました。
その中で、新幹線の駅(たぶん東京駅だったと思いますが)で「これから、どこへ行くの?」とインタビューされていた、小学校低学年と思われる女の子が、こう答えていました。
「広島のおばあちゃんと、ばあばのおうちです」
え?「おばあちゃん」と「ばあば」?おんなじじゃないの?と思いましたが、
「あ、そうか、『内孫』と『外孫』、つまり『父方の祖母』と『母方の祖母』で、呼び方を変えているんだ!」
と気付きましたが、どちらが「おばあちゃん」で、どちらが「ばあば」なのか?は、わからないままでした。
それよりも、
「『おじいちゃん』と『じいじ』」
は、一体どこへ行ったのでしょうか・・・・。