新・ことば事情
6220「高齢者の運転ミス」
11月12日午後3時ごろ、東京・立川市の病院で、「83歳の女性」が運転する車が暴走し、30歳代の男女2人をはねて死亡させる事故がありました。
これを伝えた11月14日夕刊の記事での「加害者」の表現は、
(読売新聞)上江洲(うえず)幸子容疑者(83)
(産経新聞)上江洲(うえず)幸子さん(83)
(日経新聞)83歳の女
朝日と毎日には、この日の夕刊には記事が載っていませんでした。(この日の朝刊は「休刊日」でお休み。)
また11月14日の読売テレビ『かんさい情報ネットten.』と、日本テレビ『every.』では、
「83歳の女性」
という表現でした。
ネットで検索してみると、UPした時系列では
(日本テレビ))83歳の女性(11月12日18時03分)
(産経新聞)国分寺市の女性(83)(11月12日18時15分)
(フジテレビ)83歳の女性(11月12日19時11分)
(日経新聞)国分寺市の女性(83)(11月12日20時27分)
(TBS)83歳の女性・国分寺市に住む83歳の女性(11月12日20時42分)
(NHK)83歳の女性(11月12日20時44分)
(時事通信)上江州幸子さん(83)=国分寺市東戸倉=(11月12日21時25分)
(朝日新聞)上江洲(うえず)幸子さん(83)(11月12日22時18分)
(毎日新聞)上江洲(うえず)幸子さん(83)
(11月12日17時45分・最終更新23時13分UP)
(読売新聞)83歳の女、車を運転していた国分寺市の女(83)(11月13日)
(テレビ朝日)83歳の女性(11月14日11時57分)
(東京新聞)上江洲幸子(うえずさちこ)さん(83)(11月14日夕刊)
でした。これに関して11月に富山で開かれた新聞用語懇談会秋季総会で質問しました。
『11月12日に、東京・立川市の病院で、「83歳の女性」が運転する車が暴走し、30代の男女2人をはねて死亡させる事故がありました。
これを伝えた各紙の報道は、上記のようなものでした。
こういった「高齢者の運転ミスによる死亡事故の加害者」は「男・女」か?「男性・女性」か?基準はどのあたりにあるのでしょうか?』
各社の回答は、以下の通りです。
(朝日新聞)社会部デスクの判断。事件・事故でどの程度の処罰になるかによって、途中で表現が「女→女性」あるいは「女性→女」(「男→男性」「男性→男」)に変わる可能性もある。微罪なら「さん」付き。
(毎日新聞)立川市の83歳女性のケースは、この加害者女性もけがをして入院して、まだ逮捕されていなかった。逮捕状が出ていなければ「さん」。しかし、遺族感情を考えると、加害者に「さん」はおかしくないか?と社内で議論になった。その場合、「肩書」があれば「○○課長」のように書けるが、「高齢者」は「職業不詳」などで、そういう方法が使えない。「容体が回復し次第、逮捕する方針」などと入れるしかないか。
※14日は「新聞休刊日」。「産経・東京」は「夕刊がない」ので、この日は朝刊。・夕刊共なし。「産経・大阪」は「東京の前日の情報」しかなくて、「容疑者情報(逮捕状が出た)」を載せられなかったのではないか(道浦の推測)。
というようなことでした。これからこういった事故の報道が増えると思いますが、よく注視して見ていきたいと思います。