新・ことば事情
6200「ヒスパニックとラティーノ」
民主党のヒラリー・クリントン氏と、共和党のドナルド・トランプ氏のアメリカ大統領選挙の討論会で、トランプ氏が主張する、
「不法移民が入って来られないように、メキシコとの国境に、メキシコの費用負担で壁を造る」
という荒唐無稽な案に関して、10月19日の日本テレビのニュースで、
「ヒスパニック層」
という言葉が出て来ました。この、
「ヒスパニック」
という言葉、最近は「別の表現」になっているのではないか?と思ってネット検索をかけてみたら、10年前の記載がトップに出て来ました。2006年5月17日の「教えて!goo」です。そこには、
「『ヒスパニック』という呼び名はどうして生まれたのか?辞書には『蔑みの意味』があると書いてあったが・・・」
というような質問が。それに対する「ベストアンサー」は、
「『ヒスパニック』(hispanic)は、アメリカの人口統計上の専門用語として使われだした比較的歴史の浅い言葉。戦後、メキシコ以外の中南米からの移民(不法移民も含む)が増えるに従い、新しいネーミングが必要となり中南米人を指す『ラティーノ(latino)』が使われたこともある。しかしこれは、古くから米・南西部にいるスペイン人の子孫が納得せず、最終的に『ヒスパニック』が採用されたようだ。」
また、「アメリカ在住37年」の人からは、こんな意見も。
「『ヒスパニック』は元々スペイン系、スペイン語をしゃべるということだが、スペイン系でなくても、スペイン語を話す中南米系を示すようになっている。しかし、中南米系として『ラティーノ』という表現の方が、人種背景からすると正しい表現で、彼ら自身も『ラティーノ』と呼ばれる方が、誇りを持って感じるようだ。もうひとつ、中南米系の中の、特にメキシコから来たということで『チカーノ(Chicano)』という表現があり、他の『ラティーノ』と区別してよく使われる。」
そもそも「ヒスパニック」は、「スペイン」を表すスペイン語「エスパーニャ」が、
「イスパーニャ」→「ヒスパーニャ」
となって、それが英語の形容詞で「ヒスパニック」となったのでしょう。だから、
「スペイン語を話す人」
という意味だったのでしょうが、その後、同じように「スペイン語を話す人たち」の中で、
「俺達の起源は『ラテン系民族』なので『ラティーノ』だ」
という「区別する言い方」が出て来たようですが、一般的に日本で使うには、
「ヒスパニック」
は「一般的な言葉」で、特に問題は無いと思いました。