新・読書日記 2016_154
『偉くない「私」が一番自由』(米原万里:佐藤優・編、文春文庫:2016、4、10)
ロシア語通訳で作家の米原万里さんが亡くなって、早くも今年で10年。没後10年を記念して編まれた「アンソロジー」だ。編んだのは、佐藤優さん。ロシア駐在の外交官だったが、鈴木宗男さんがらみの国策捜査で捕まって作家に転身。今や「日本を代表する頭脳」と言っても過言ではないだろう。「ロシア語」を媒介して生前から米原さんと交流のあった佐藤さんが、ロシア料理のフルコースのように、米原さんの作品から選りすぐりのものを上手に並べた。中でも、米原さんの東京外国語大学の「卒業論文」が全文収録されているのがミソ。タイトルは、
「ニコライ・アレクセーヴィッチ・ネクラーソフの生涯」
「ネクラーソフ」なんて「根暗」そう!実在の人物なの?と、ついつい(米原さんのことだから)騙された感があるが、実在の人物だそうだ。
あとがきを読むと、佐藤さんが捕まる前日に、米原さんから、
「これから話したいことがある。出て来られないか」
と電話があったそうだ。それだけ、佐藤さんの身の上を心配していたんですね。そういう裏話は貴重ですね。
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