新・ことば事情
6191「一人ぽっち」
7月7日に、永六輔さんが亡くなりました。もう、3か月ほどたちます。
永さんの作詞家としての代表作の一つに、あの坂本九さんが歌った、
「上を向いて歩こう」
があります。「スキヤキ」というタイトルで、全米チャートでも上位に挙がった曲として有名です。実際、私も合唱団でよく歌った曲です。
その歌詞カードを今回改めて見ていて、「おや?」と思ったのは、
「一人ぽっちの夜」
という歌詞なのです。
「一人ぼっち」(BOTTI)
ではなく、
「一人ぽっち」(POTTI)
つまり「ぽ」と「半濁音」なのですね。歌詞カードには、確かにそう書いてあります。
これまで何十年も、私は、
「ぼっち」(BOTTI)
と「濁音」で歌って来ました!気付かなかった!
でも「半濁音」の「ぽっち」には違和感があります。
坂本九ちゃんの歌声では、「ぼっち」とも「ぽっち」とも聞こえる気がします。
永さんが亡くなったことで、
「六八九トリオ」
と呼ばれた「作詞家・永六輔」「作曲家・中村八大」「歌手・坂本九」の3人は全て「あの世」に召されたことになります。永さんも「一人ぽっち」じゃないですね。
でも「あちら」に行ってしまったら、「この世」は「下」になりますから、「上を向いて歩こう」じゃなくて、
「下を向いて歩こう」
だったりして。あ、そういえば「網膜剥離」で入院していた私は、9月の1か月間は、ずっと、
「下を向いて」
過ごしていましたけどね。硝子体の代わりに入れた「軽いガス」の力で、剥がれた網膜をくっつけるので、下を向いていなければならず、寝る時もずっと「うつ伏せ」でした。