新・読書日記 2016_139
『コンビニ人間』(村田紗耶香、文藝春秋:2016、7、30第1刷・2016、8、5第2刷)
第155回芥川賞受賞作。著者が実際にコンビニで働いているという意味では、ドキュメンタリー的な側面もあるかも。読んでみると「ああ、純文学」という感じでしたね。
「コンビニ」という身近な存在と「人間」をくっつけたタイトルが良いですね。
普通は「○○人間」というと、「マジメ人間」「仕事人間」のように、「その人の性格」を表す言葉が「人間」の前に付きます。そういう意味では「コンビニ」というものが、主人公の「性格」を表していると。
「コンビニ」は、もちろん「コンビニエンスストア」の略ですが、「スーパーマーケット」や「デパートメントストア」をフルネームで呼ぶ人がいない様に、「コンビニ」もフルネームで呼ぶ人は、もうほとんどいないですよね。それだけ「空気のようになった存在」が、「人間の性格」になっても不思議ではないかと。
「コンビニ」の中ではコミュニケーションが取れるけど、それ以外の場所ではコミュニケーションが取れないという、ある意味「いびつな人間」の存在は、一体何を示しているのか。その「枠」を打ち破ろうとするのだけど、なかなか打ち破れない。冷静な目でそういった存在を見つめています。
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