新・ことば事情
6161「懸濁」
9月、網膜剥離の手術を受けて、3週間入院している間は、1日4回、5種類の目薬を差していました。それぞれ、
「5分以上、間隔をあけなくてはならない」
ので、たかだか、「目薬を差す」というだけで20~30分ぐらい時間を取られます。まあ、入院中、本を読んではいけないし、テレビも見られないので特にやることもなく、時間はたっぷりあるのですが。
その5種類ある「目薬」の中に、
「よく振って!!」
と書かれた、粘り気があり黄色いキャップ(ふた)の容器に入った目薬がありました。その容器には、こう書かれていました。
「懸濁性点眼液」
この中の、
「懸濁」
という言葉は、初めてみました。
「粘り気のある」
という意味だというのは解りますが。
退院後、辞書を引いてみました。『精選版日本国語大辞典』には、「懸濁」は載っていませんでしたが、「懸濁液」という形では載っていました。
*「懸濁液」=肉眼または顕微鏡で見える程度の固体粒子が分散し、濁っている液体。水中に炭素粒子が分散している墨汁、水中に粘土粒子が分散している泥水など。サスペンジョン。」
え!ぼ、墨汁?ど、泥水?
いいのか、そんなものを、目に差しても?
そのぐらい、粘り気があるということですね。
実際、容器をグッと押しても、なかなかその目薬は落ちて来なくて、「タラーッ」といった感じなんです。
入院中は看護師さんが、
「冷やすと、少し粘りけがなくなって、差しやすいですよ」
と、目薬を冷蔵庫で保管してくれていました。
『広辞苑』にも「懸濁液」は載っていました。『三省堂国語辞典』には載っていませんでした。専門用語なんですね。