新・ことば事情
6158「盛り土」
9月は、東京の豊洲市場移転問題で1か月バタバタして、いまだにその問題は、解決の糸口が見えていません。問題となったのは「有害物質の影響を防ぐために、行うべきだ」と専門家委員会が諮問した、
「盛り土」
が、実際にはされていなかったこと。しかも、本来「盛り土」があるべきところには、当初予定されていなかったはずの「地下空間」ができていたことで、更に、
「どうなっているんだ?」
と、混迷を極めています。
さて、この「盛り土」の読み方ですが、一般的には、
「もりつち」
と言いますが、ここでは土木関係の専門用語として、
「もりど」
が使われています。今回の件について放送各社は、別に話し合った訳でもないのに足並みをそろえて「もりど」です。
この読み方に関しては、随分前(1998年9月)の新聞用語懇談会・放送分科会で、議題に上りました。その際の提案は、
「台風関係のニュースで出て来た『盛り土』。一般的には『もりつち』だが、土木用語では『もりど』。それはわかった上で、『もりつち』と言い換えたほうがよいのではないか。」
というものでしたが、結論は出ませんでした。
ことし5月にも、ニュースで「盛り土」が出て来た際、報道デスクに読み方について質問されて、そのときは、
「『もりど』でいいのでは?」
と答えて「もりど」で放送されました。同じニュースを関西テレビは、スーパーは「盛り土」で、ナレーションは、
「土を盛って造成」
としていました。
今回の豊洲市場の問題で、「もりど」という読み方はすっかり定着したように思います。
ちなみにアクセントは、「平板アクセント」の「リド」が高くなる、
「モ/リド」
だと思いますが、中には関西弁の特徴である「3拍中高アクセント」で「リ」が高くなる、
「モ/リ\ド」
と言う人もいるようです。