新・ことば事情
6156「清朝体の読み方」
今からもうちょうど10年前の、
「2006年4月24日」
に、以下のようなことを書き始めたまま、ほったらかしいになっていました。
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活字のスタイルのひとつに、
「清朝体」
というのがあります。こう書いて、
「せいちょうたい」
と読むのですが、なぜ、
「しんちょうたい」
ではないのか?こういう質問が、『新聞と現代日本語』(文春新書)の著者で(私もいつもお世話になっている)新聞用語懇談会監事の金武伸弥さんと、『週刊文春』誌上に「お言葉ですが」を連載している高島俊男さんにあてて、文藝春秋社に読者から質問が来たと、金武さんから伺いました。金武さんが調べたところによると、
「活字の現場ではたしかに『せいちょうたい』と言っている。辞書には『せいちょうたい』を引くと『「しんちょうたい」を見よ』と空見出しなっているものもある。『明朝体』は『明朝』(=「明(みん)」の時代)の活字スタイルなので『清朝体』も『清朝(しんちょう)』のスタイルと考えられる。それなら『しんちょうたい』と読んでも不思議はない。」
とのことでした。なるほど。字体の名前なんて、特に意識していなかったなあ。
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この「清朝体」を何と読むか問題が、なぜ、ほったらかしになっていたかと言うと、
「答えが見つからなかったから」
です。そして、ついに見つかったのです!
郵便学者の内藤陽介さんのブログを読んでいたら、
「活字の字体」
について書かれていたのです、そこには、
「築地活版所の本木昌造が採用したのが『明朝体』。築地活版所のライバルとなったのが『秀英舎』(のちの大日本印刷)。ここは『西国立志編』のベストセラーで大きく成長した。」
とあったのです。この中の、
「『明朝体』を採用したのは、築地活版所の本木昌造」
という記述を見て、私はピーンと来ました。
「内藤さんに聞けば、なぜ『清朝体』を『せいちょうたい』と読むかの答えがわかるはずだ!」
と。すぐに質問のメールを送ったところ、返事がきました。それによると、
「現在、一般的に用いられている清朝体の読み方は『せいちょうたい』ですが、これは、清代の揚州詩局『全唐詩』系統の字体ですから、本来は『しんちょうたい』と読むべきだろうと思います。ただし、現在の清朝体の前に使われていた『弘道軒清朝体』が『しんちょうたい』と呼ばれていたため、区別のため、あえて『せいちょうたい』と呼ぶようになったと聞いたことがあります。そうだとすると、日常生活ではどちらもOKだが、印刷などの際には混乱を避けるため『せいちょうたい』と呼ぶのが無難ということでしょうか。」
なるほど!
「私立」「市立」の区別のために「わたくしりつ」「いちりつ」と読み分けるような、
「同音忌避」
ではないか?ということですね。
長年の疑問が氷解しました!
金武さんにも教えてあげなきゃ!随分ご無沙汰しているしね。