新・ことば事情
6155「現場になります」
和歌山市で拳銃を発砲して1人を殺害、3人に重傷を負わせた45歳の男が、拳銃2丁を持って立てこもった事件。立てこもって9時間、緊急報道特番(8月31日午前)で中継していた中堅の男性記者(アナウンサー?)が、流暢にこう言いました。
「こちらが現場になります」
「最初に発砲事件があったのが、あちらになります」
「あの屋根の後ろが、男が立てこもっている建物になります」
口癖なんでしょうが、
「~になります」
を連発。
思わずテレビ画面に向かって突っ込みました。
「ここはファミレスか!」
事件現場に「ファミレス用語」「婉曲表現」は、似つかわしくありません。
「断定」の「です」を使って、
「こちらが現場です」
「最初に発砲事件があったのが、あちらです」
「あの屋根の後ろが、男が立てこもっている建物です」
と言いましょう!!
と、「8月31日」に書いたのです。
その日のうちに「網膜剥離」と診断され、翌日、緊急手術&入院で3週間。更に自宅療養1週間。
その間に聞いた「落語のCD」の中で、実はこの、
「~になります」
という言い方は、「昔からあった」ことに気付いたのです。その「落語」は、
「昭和38年(1963年)3月31日収録」の、
「八代目・桂文楽の『鰻(うなぎ)の幇間(ほうかん)』」
で、旦那に騙された幇間=太鼓持ちが、鰻屋の支払い9円75銭を、なけなしの十円札で払ったところ、その鰻屋に勤めて7年の店員が、
「お釣りになります」
と、「25銭」を渡そうとするシーンです。
「お釣りです」ではなく「お釣りになります」なのです!収録は、
「今から53年前!」
うーむ、困ったな、こんなの、見つけちゃって。
「『~からになります』はダメ!」
と言いづらくなってしまった・・・。
でも、「お店」では昔から使っていたからと言って、それを、
「立てこもり事件の現場」
に使っちゃいけませんよね!!