平成ことば事情269「丁字路」でも書きましたが、以前は、
「丁字路(ていじろ)」
と言われていたものが、近頃は、
「T字路(ティーじろ)」
になって来ているという話です。
これに関しては、新聞用語懇談会の席でも過去に随分討議されているので、その経過を載せますね。
【2002年4月 放送分科会】
「丁字路」=「ていじろ」が本来。しかし最近はローマ字の「T字路(ティーじろ)」になっている。まあ、仕方ないか。辞書にも採用されるようになってきているし。
【2012年9月 放送分科会】
毎日放送の委員から、「丁字路」「T字路」の使い分けについて、
「JNNでは『T字路』の表記・読みとも許容することにしました。」
と報告があり、これに関連して、
「NHKと共同通信は今も『丁』。NHKが『丁』と決めたのは1977年。当時も混在していたので『丁』に統一したが、すでにそれから35年がたっている。」
という意見が出ました。それ以外の各社は「T」を、既に容認していました。
【2014年9月 放送分科会】
(フジテレビ)FNS系列では「○ 丁字路(テージロ)、× T字路(ティージロ)」と定めていたが、報道が「警視庁交通総務課&広報課」に確認したところ、警察内・マスコミ広報でも「T(ティー)字路」と呼んでいる現状。そこで報道としては主に事故原稿で使用する際に、今後FNNとしては(「丁字路」ではなく)「T字路」を使用することになりました。各局の状況を教えて頂きたいです。
(NHK)ハンドブックでもどちらを使っても良いことになっている。
(日本テレビ)両方出て来る。去年、クイズ番組に「丁字路」の読み方について問うものがあり、最初は「テイ」のみ○で、「ティー」は×としていたが、番組監修の『明鏡国語辞典』 編纂者で筑波大学名誉教授の北原保雄先生に伺ったところ、「両方OK」とのことだったので、「T(ティー)字路とも」と表現をやわらげた。
(テレビ朝日)「T」もOK。「T」が圧倒的に使われている。「てい」と読むと「ティー」がハッキリ発音できないのか?と思われる。「三差路」は「Y字路」と言うことも。
(テレビ東京)統一していない。両方OK。
(共同通信)新聞原稿では「丁」を使う。放送原稿にルビを振っていないが、もしルビを振るなら「てい」。
(朝日放送)統一していないが、「丁」の出稿はない。
(関西テレビ)「丁」も「T」も「てい」と読んでいる。
(読売テレビ)特に決めていない。しかし、片方の道路が中央分離帯のある広い道路の場合は、「T」ではなく「〒」ではないか?と問題になったことはあった。
(テレビ大阪)50代のアナウンサーは「てい」と読み、30代・20代は「ティー」と読んでいる。以前アナウンサー試験で「丁字路」と問題を出したら「チョージロ」と読んだ受験者がいた。
(読売新聞)「丁」も「T」も形から来ているので、どちらかが絶対正しい、ということではないだろう。「三差路」と「Y字路」は同じぐらいの頻度で出て来る。
(TBS)2年前に「丁(てい)字路」に加え「T(ティー)字路」もOKとした。道路交通法では「丁(てい)字路」。
(毎日放送)以前、「丁字路」を「てい」と読んだら視聴者から「ティーではないのか?」と問い合わせが来たので調べてみたら「自動車学校(教習所)」=「T(ティー)」、「安全教本」も「T(ティー)」だった。「Vターン」「Y字路」などもあるので、アルファベットを使うのは問題ないのではないか。
【2015年5月 関西地区用懇】
(関西テレビ) 放送では「真逆」「T字路」など、新しい言葉が出て来た場合には「辞書に載っているか?」を基準にするが新聞社はどうか?
(朝日新聞)問題になったら辞書を参考にするが「丁(てい)字路」か「T(ティー)字路」かは、「T字路」が大勢。一般に使われていると判断したら、辞書に載っていなくてもそのまま通すことも。「通りがかる」は間違いで「通りかかる」と濁らない形が正しいとされているが、「通りがかる」が辞書に載ったら認めることも。しかし「1面」の(看板コラムである)「天声人語」に、もし「通りがかる」が出て来たら、「通りかかる」に直してもらうかもしれない。
(日経新聞)2つ以上の辞書に載っていたら認める。「1面」は「顔」なので、新しい言葉を載せるのは抵抗があっても「中面」でならば載せる。「丁字路」「T字路」は、個人的には、「T字路」はまだ外来種なので「丁字路」を支持。
ということでした。
さて、この9月「網膜剥離」で3週間、入院している間に、新たな情報が!
入院中に聞いていたラジオ放送で、「T字路」見つけたのです。
フジテレビのドラマ「続・最後から二番目の恋」劇中歌で、小泉今日子・中井貴一のデュエット曲(2014年6月4日リリース)が、その名も
「T(ティー)字路」(作詞・作曲:横山剣 / 編曲:鈴木正人)
だそうです。
ま、最近の曲なので「T(ティー)」なのでしょうね。
(2016、10、5)