新・ことば事情 (2016、8、18)
6138「監督か?ヘッドコーチか?コーチか?」
日本時間の8月17日、シンクロナイズドスイミングのデュエットで、三井・乾組が2大会ぶりの銅メダルを獲得しました。おめでとうございます!
奇しくもこの日(現地・8月16日)は、指導に当たった「シンクロの母」こと、
「井村雅代さん」
の66回目の誕生日でした。
ところで、この井村雅代さんは、「監督」なのか、「ヘッドコーチ」なのか、それとも「コーチ」なのか?「ミヤネ屋」の原稿とテロップに、
「鬼コーチ」
という表記が出て来たので「日本選手団名簿」を確認すると、井村雅代さんは、「コーチ」ではなく、
「監督」
となっていました。その理由をディレクターに尋ねると、
「日テレ原稿では『ヘッドコーチ』という英語名を使っているようなので、それに従ったのですが・・・」
という答え。しかしご存じだと思いますが、英語の、
「head coach(ヘッドコーチ)」
は、日本語に訳すと、
「監督」
です。まあ、しかし「肩書表現」は統一したほうがいいから、それならそれに従いましょう。でも、
「鬼ヘッドコーチ」
とすると文字数も多く、語呂も悪くなじまないで、そこは
「鬼監督」
でいって、名前と一緒に出す時は、
「井村雅代ヘッドコーチ」
にしましょうということになり、それで放送しました。
ところが!「ミヤネ屋」放送が終った後に、日本テレビの「every.」を見ていたら、
「井村雅代監督」
と「監督」を使っているではないですか!日本テレビの中でも統一されているわけではなく「番組ごとの判断」のようですね。
ちなみにその後の、NHK「7時のニュース」では、ナレーションもテロップ(サイドスーパー)も、
「井村監督」
でした。
しかし、本記のナレーションの中では、
「ロサンゼルス大会からヘッドコーチとして指導しました」
と、「ヘッドコーチ」も使っていました。
しかし本番の「競技実況」は、
「井村コーチ」
でした。
また、8月17日の各紙夕刊の表記は、
(読売)ヘッドコーチ(2回目は「コーチ」)
(朝日)コーチ
(毎日)ヘッドコーチ
(産経)監督
(日経)ヘッドコーチ(2回目は「コーチ」)
でした。また、翌18日のTBSの朝のワイドショー『白熱ライブ・ビビット』では、
「井村雅代ヘッドコーチ」
と「ヘッドコーチ」を使っていました。
同じような問題は、「48キロ級・登坂」「58キロ級・伊調」「69キロ級・土性」で3つの金メダルを取った8月18日の「レスリング女子」でも起きました。
「栄和人監督」
の肩書を「日本選手団名簿」で確認したところ、
「チームリーダー」
になっていたので、テロップはそれでいこうと指示。しかし、中継を見ていたら、実況アナウンサーが、
「栄本部長」
と「本部長」と呼んでいて、インタビューに答えた土性沙羅(どしょう・さら)選手は、
「監督を肩車するって」
とやはり「監督」を使っていました。
同じ競技で「男女の別」がある場合には「男子チーム監督」と「女子チーム監督」がいるースもありますし、本当にややこしいです。