新・ことば事情
6137「公船」
このところ連日・・・というか、春からずっと、尖閣諸島に中国の船が入り込んでは、まあ、ある意味の「示威行為」を続けているというニュース。
最初は「漁船」だったのが、「軍艦」に近いようなものまで出て来るようになり、きのう(8月16日)のニュースの映像を見たら、あれまあ、ワンカットカートの画面に、
「数十隻の船」
が写っているではありませんか!
月並みな言葉ですが、もう、
「海の銀座」
みたいな様相を呈しています。
これらのニュースでよく出て来るようになった言葉は、
「公船」
です。「公の船」です。ふだん、あまり使わない言葉です。「こうせん」と聞いて思い浮かぶものと言えば、
「工船」
ですね、「蟹工船」の。
十数年前に北朝鮮の船が日本海に出没した時には、
「不審船」
という言葉がよく使われましたが(平成ことば事情833「不審船と工作船」参照)、今回の尖閣の船は、明らかに「中国の船」と分かっているので、その意味では「不審船」ではありません。正体が分かっているからです。しかも、
「民間の船ではなく、中国の国が出している船」
ということで、「公船」なのでしょうか?意味を調べましょう。
『三省堂国語辞典』『新明解国語辞典』『明鏡国語辞典』『NHKアクセント辞典』には載っていませんでした。『広辞苑』には載っていました。
*「公船」=(1)私法上、公用に供する船舶。多くは官公署の所有に属する。軍艦・測量船・練習船の類。
(2)国際法上、国家の公権を行使する船舶。軍艦、警察用・税関用の船舶の類。
とありました。また、『精選日本国語大辞典』には、
*「公船」=(1)国の管理に属し、公用に供される船舶。測量船、検疫船、巡視船など。
(2)国際法上、国家の公権を行使する船舶。警察用、税関用の船舶など。⇔私船
とありました。ほとんど同じですが、今回の中国の「公船」は(2)の「国際法上・・・」というのが当てはまるでしょうね。
あまり、話し言葉では出て来ない「国際法上」で取り決められている概念なのですね。
英語では、何と言うのでしょうか?直訳なら、
「public ship」
ですかね?
そもそも、中国の「海自警察(海警局)の船」と「海軍の船」の両方が出て来ていると思うんですけど、それらをひっくるめて言うために「公船」と言っているんしょうかね?
8月17日夜7時の「NHKニュース」では、
「中国海警局の船4隻が」
と読み、テロップでは、
「中国当局船」
という表現を使っていました。
8月17日の各氏夕刊では、
【見出し】 【本文】
(読売)中国公船 中国海警局の公船
(朝日)中国公船 中国海警局所属の公船「海警」
(毎日) <記事なし>
(産経)中国公船 中国海警局の船
(日経)中国公船 中国海警局の公船
でした。