新・ことば事情
6133「あん馬と跳馬」
リオ・オリンピックの体操競技を見ていて、ふと思いました。
「あん馬」も「跳馬」も、なぜ「馬」なのか?
たぶん「体操競技」はヨーロッパで始まったので、それと関係しているのではないか?
そもそも「英語」では何と言うか?調べてみよう!和英辞典(電子辞書)を引いてみると、
男子の6種目から。
「あん馬」=pommel horse
「跳馬」 =vault horse
「鉄棒」 =the horizon bar
「ゆか」 =floor exercises
「平行棒」=the parallel bars
「つり輪」=the rings
でした。
「pommel」は「馬の鞍(くら)」ですから、「あん馬(鞍馬)」は「直訳」ですね。
「vault」は「跳ぶ」ですから、「跳馬」も「直訳」。「ゆか」「平行棒」の「floor exercises(ゆか運動)」「the parallel(平行) bars(棒)」も直訳ですね。「ひねり」がありません。その分、競技で「ひねり」を入れているのでしょうか?
そう言えば「棒高跳び」は、
「the pole vault」
でしたね。昔、棒高跳びの「鳥人(ちょうじん)=超人」と呼ばれた
「セルゲイ・ブブカ選手」
が、大阪城ホールで行われた競技会に来た時に、覚えました。
「horizon」は「地平線」「水平線」と覚えていましたが、この場合は、
「水平の」
という意味のようです。
「鉄棒」は「単数形」で「平行棒」は2本あるから、しっかり「複数形」です。
最後の「the rings」は直訳だと、
「輪」
だけなので、さすがにちょっと「輪」だけだと「笑っていいとも!」みたいで、なんですから、イメージの「吊(つ)り」を足したのでしょうかね。
「the suspended rings」
ではないのか。
女子は4種目で「跳馬」と「ゆか」は男子と共通で、独自の種目は残りの2つ。
「段違い平行棒」=the uneven bars
「平均台」 =the balance beams
でした。
「段違い」は「イーブンでない」と記されていて、「棒」も「複数形」である「bars」ですね。
また、「平均台」は、「バランス」はわかりますが、「beams」は、
「光線」
じゃないの?と思って辞書を引くと、他の意味で、
「梁(はり)、横材」
というのがありました。これだ!つまり直訳なら、
「バランス台」
とするところではないでしょうか。
さて最初の疑問に戻ってなぜ体操には「あん馬」「跳馬」と「馬」が出て来るのか?
おそらく、ヨーロッパの騎士は「馬」に乗っていたので、日頃から「馬」が道具であり、仲間であり、騎士として馬に乗ってその腕を上げるために、「馬」に関連した技術を磨くことを競っていたのではないか?それで「馬」がらみの名前の競技が多いのではないか?と思いました。
その競技で、日本勢が金メダルを取ったわけですが、ヨーロッパの「騎士」と同じように、日本の体操チームは、
「サムライ」
であるということでしょう!
それにしても「跳馬」は今回見たら、何か「今風」のオシャレな形と色になっていました。また「あん馬」も、昔はもっと「鞍」っぽくて、本当の「馬の鞍」の形をしていて、そうですね、「跳び箱の一番上の所」に脚が付いたような感じで、見るからに、
「体操器具」
という感じ。ふだんは「体育倉庫」の中でホコリを被って静かに眠っていそうな感じでした。