新・ことば事情
6108「通知簿か?通知表か?」
報道のMKデスクが、お昼のニュースの前に質問に来ました。
「道浦さん、小学校の終業式で渡すのは『通知簿』でしょうか?それとも『通知表』でしょうか?学校側から送って来たFAXでは、『通知表』を使っているようなんですが・・・。」
「ああ、それねえ。今、大阪の小学校では『あゆみ』って名前になってるみたいだけど。うちの子ども達なんかは『通知表』とも『通知簿』とも言わずに『あゆみ』って言ってたけどなあ」
と言うと、奈良在住のK部長も、
「奈良でも『あゆみ』です」
また、スポーツ担当のHチーププロデューサーも
「兵庫県も『あゆみ』です」
でも「あゆみ」じゃあ、「人の名前」みたいだしなあ。「平成ことば事情4431」でも「あゆみ」について書いたけど。もう5年前だけど。
辞書で「通知表」「通知簿」を引くと、なんと「空見出し」で、
「『通信簿』を見よ」
となっています。『精選版日本国語大辞典』では「1926年」の用例が載っていました。そこから考えると、当初(昔)は、
「通信簿」
だったものが、いつの頃からか「簿」だけはそのままで、
「通知簿」
になり、更に「簿」というのも大げさなので(?)「表」となって、
「通知表」
になっているのではないか?と推測されます。そのようにMKデスクに伝えたところ、お昼のニュースでは、
「通知表」
で放送していました。ただ、「1学期の終業式」を取材した大阪市の「本田(ほんでん)小学校」で子ども達に手渡されていた「通知表」の表紙には、
「通知票」
と記されていました。読みは「つうちひょう」なので「通知表」と同じですが、「ひょう」の漢字が「表」ではなく、
「票」
だったのです!ややこしい!
その後に見たABC(朝日放送)のお昼のニュースでも、
「つうちひょう」
と女性アナウンサーは読んでいたのですが、「字幕スーパー」は出なかったので「通知表」か「通知票」かは、わからなかったのですが、その取材をしていた大阪市内の別の小学校で、先生が子ども達に手渡していた「つうちひょう」の表紙には、「あゆみ」でも「通知表」でもなく、
「学校の生活の記録」
と記されていました。硬い表現!
その後報道フロアですれ違った、うちのアナウンサー4人に聞いてみたところ、
「通信簿」(50代男性アナウンサー・福岡出身)
「小学生のときは『通信簿』。中学では『通知表』でした。小学生の時に『ツ/ーシンボ』と言うのが『ツ/クシンボ』『ク/イシンボ』『ア/マエンボ』と同じ仲間だと思っていて、何で学校で使う言葉なのに、こんなにカワイイ言葉なんだろうと思った記憶が。ちなみにアクセントは『家計簿』『出席簿』も『平板アクセント』で『カ/ケイボ』『シュ/ッセキボ』です。これは静岡(焼津)の方言アクセントですかね?」(50代男性アナウンサー、静岡・焼津出身)
「『通知表』。『あゆみ』とも言っていましたが、その後『かがやき』か何かの名前に変わりました。」(20代新人女性アナウンサー・神奈川・横浜出身)
「『通知表』ですが、祖父母は『通信簿』と言っていました」(20代2年目女性アナウンサー、岡山出身)
という回答でした。
(追記)
「ミヤネ屋」のADの若者たち(1986年から1992年生まれ)11人(複数回答)で聞いてみたところ、
(1)通知表=5人(大阪3、香川2:1987~1992年)
(2)通知簿=0人
(3)通信簿=0人
(4)あゆみ=7人(鹿児島2、兵庫1、岐阜1、大阪1、東京1、奈良1:1986~1992年)
という結果でした。(1人、小学校の途中で大阪から鹿児島に引っ越した人がいて、その人は大阪で「通知表」、鹿児島で「あゆみ」という結果にで、ダブルカウント。)
「あゆみ」の広がりは、関西にとどまらないようですね。
(2016、7、21)