新・ことば事情
6099「玄関先」
「ミヤネ屋」のテロップをチェックしていたら、
「玄関先に入った」
という文章が。そこで疑問が。
「『玄関先』という場合の『先』は、『前』ということ。だから『玄関先』は『玄関』(=家の中)には『入っていない』のではないか。つまり『玄関先に入った』という表現は間違いで、正しくは『玄関に入った』なのではないか?」
と思ったのです。
分かりにくいと思いますが、「玄関」とは、
「家の建物の戸・ドアの中で、土足で入る所」
だと私は思うのですね。土間とか三和土とかタイル張りとかで。その「先」というのは、
「戸・ドアの外」
だと思うので、そこに「入る」という表現は、なじまないのではないかと。
『広辞苑』で「玄関先」を引いてみると、
「玄関のあたり」
とあります。「あたり」というのが微妙で、それだと「中も外も含む」のかもしれませんね。『精選版日本国語大辞典』でも、
「玄関のあたり。玄関前」
とそっけない表現です。『デジタル大大辞泉』でも
「玄関の前。玄関のあたり」
と順番が変わっただけ。あんまり、詳しく悩んだことは無いような表現です。
しかし、こういった意見もありました。
「外から来ると、家の『門』があってその先に『家』があって『玄関』があるとすると、『門』の中の敷地には入ったけど『玄関』には入らず、という状態は、『玄関の前=玄関先』にいるんだから、『玄関先に入る』という状況もあるのではないか?」
あ、なるほど、一軒家では有り得ますね。マンションやアパートでは使えないけど。
結局、原稿は「先」は外して「玄関に入った」にしました。