新・ことば事情
6091「バングラデシュ?バングラディシュ?」
バングラデシュの首都ダッカで7月1日、日本人7人を含む20人が殺害されるテロが起こりました。IS(「イスラム国」)を名乗る、いわゆる「ホーム・グロウン・テロリスト」の犯行とみられています。亡くなった皆様は、本当に無念だったこととお察し申し上げ、お悔やみ申し上げます。
さて、テロ事件の起きた国「バングラデシュ」ですが、「平成ことば事情1471バングラデシュとフィーチャー」でも書いたように、
「バングラディシュ」「バングラディッシュ」
というように「ディ」「ディッ」と発音する人がいます。今回の事件のニュースでも、テロップのほうは正しく、
「バングラデシュ」
と書いているのですが、中継している記者や原稿を読んでいるアナウンサーでも、
「バングラディシュ」
と「ディ」で発音しているように聞こえる人が多数いました。
読売テレビから上海支局に行っている高井望記者も、応援でダッカへ行って中継していましたが、
「バングラディシュ」
と言っていましたし、東京・羽田空港からの中継で、政府専用機が現地へ行くという内容のリポートをしていて日本テレビの女性記者も、
「バングラディシュ」
と言っていました。他局でも、テレビ朝日7月4日のお昼のニュースでダッカから中継していた登島貴之記者も、最初は「バングラディシュ」と言っているように聞えました。しかし、2回目・3回目は「バングラデシュ」と聞こえました。私の耳が悪いのかもしれません。
もしかしたら、昔は日本では、
「バングラディシュ」
と言っていたのではないか?それがいつからか、正しい発音の、
「バングラデシュ」
に修正されたのだけど、昔の習慣でつい、
「バングラディシュ」
と言ってしまうのではないか?と思い、「バングラデシュ」の歴史を少し調べてみました。
「バングラデシュ」という国は、もともとは、
「東パキスタン」
と呼ばれていました。インドを挟んで東側と西側に「パキスタン」はあったんですね。その東パキスタンが独立したのが、「1971年12月」。当時の新聞をひもといてみました。『読売新聞』の縮刷版を見てみると、「12月18日」の1面に、
「印パ戦争14日ぶり終結」
「ヤヒア大統領 西パの停戦受諾」
「『東』独立か自治拡大か」
という見出しが躍っています。そして、その前日の「12月17日」の紙面には、
「バングラ・デシュ政府 一両日中に 正式樹立宣言」
というふうに、「バングラ」と「デシュ」の間に「・」が入っていたのです!思えば「マスコミ」も、当初は「マス・コミ」と「・」が入っていましたが、いつの間にか無くなりましたからね。「2語の略語」から「1語」として認識されるようになれば、「・」は付かなくなります。「バングラ・デシュ」は、いつから「・」はなくなったのでしょうね?
でも当初から「バングラディッシュ」「バングラディシュ」では、なかったのですね。
勉強になりました。グーグル検索では(7月8日)、
「バングラデシュ」 =1020万0000件
「バングラディシュ」 = 59万8000件
「バングラディッシュ」= 48万2000件
でした。
(追記)
これだけ取り上げられているのに、まだ気付いていないアナウンサーがいました。
7月22日のNHKお昼のニュースで、大阪放送局から関西ローカルニュースを伝えていた、もうベテランと思しき白髪交じりの男性アナウンサー。テロップは、
「バングラデシュ」
と正しく出ているのに(おそらく原稿も)、盛んに、
「バングラッディシュ」
と読んでいました・・・これ、もし読むことがあったら、次から気を付けてくださいね。