新・読書日記 2016_107
『「安倍一強」の謎』(牧原出、朝日新書:2016、5、30)
帯には、
「アベノミクス、安保法制~反対が多いのに なぜ支持率が下がらないのか?」
とある。たしかに人気が高い安倍内閣。その秘密を、「政治学の新旗手が解明」(これも帯に書いてあった。)
著者の牧原出氏は1967年生まれの政治学者。東大教授。著書では、たしか「聞き書き・野中広務」を読んだ覚えがある。
各章のタイトルを見ると、序章の「国民の信頼は一瞬にして失われる!?」から始まり「政権交代で何が変わったのか?」「菅義偉官房長官仕様の『官邸』」「安保法制という混迷の政策転換」「内閣の性格を変えた2014年総選挙」「安倍首相の言葉と野党党首の言葉」、そして終章が「野党が政権を奪い返す条件」。
「政権交代」がキーワードで、自民党から政権を奪取した2009年の民主党。しかし、「こんなはずでは・・・」という失望を味わわされた3年余で、自民党が政権に復帰した2012年。2度目の総理の座についた安倍首相は、着々とその地盤を固め、「前回の内閣でやりたかったのに、できなかったこと」を達成するために邁進している。その「官邸」をしっかりと固めているのが、官房長官である菅義偉だ。2000年には「186人」しかいなかった「内閣官房」が、2015年10月現在は「1007人」にも膨れ上がっている。強大な組織だ。「官邸」はここで回っている。やはりそうか。ある意味、「政権交代」から、また「政権奪還」となったのだから、一見「二大政党」による政治体制が回り始めたようにも見える。しかし実際は、民主党(民進党)は、未だに政権を失ったショックから立ち直れていない様に見える。「二大政党」とはとても言えないのが、現状である。4日後に行われる参院選挙を経て、安倍・自民党は、そして日本は、一体何処へ向かっていくのか。しっかりと、見つめなければならない。(2016年7月6日記)