新・ことば事情
6074「ゾウの花子天国へ」
5月26日、東京・井の頭自然文化園で飼われていたメスのアジアゾウ、
「はな子」
が死にました。それを報じた翌5月27日の新聞各紙の見出しと本文は、
(見出し) (本文)
(読売)「はな子」天国へ:死んだ/ 死んだことが確認された
(朝日)「はな子」大往生:死んだと発表した/ 死んだこを確認した
(毎日)はな子天国へ : 死んだと発表した/ 死んだことが確認された/ 息を引き取った
(産経)ゾウの「はな子」天国へ:死んだ/ 「穏やかに逝った」
(日経)最高齢ゾウはな子死ぬ: 死んだ/ 死亡が確認された
というように、見出しで「死ぬ」としたのは「日経」のみ。一番多い表現は、
「天国へ」で、読売・毎日・産経が使っています。朝日は「大往生」。「はな子」は、国内最高齢の69歳でしたが、ゾウの平均寿命は「60歳」だそうですから、長生きでした。その意味では「大往生」は使えるでしょう。
本文では「死んだ」というシンプルなものが多いですが、園長の発言の引用で、
「穏やかに逝った」
という表現や、
「息を引き取った」
というものもありました。あ、実は「亡くなる」「死亡」というように「亡」の字は、
「人間にしか使えない」
ということがあって、「動物が死んだときに、どう表現するのか?」という問題なのです。
これは、読売新聞校閲部OBのNさんに聞いたのですが、新聞社が「死ぬ」を避ける要因の一つとして、以前間違って、
「死ね」
と出してしまったことがあるからだ、ということも伺いました。ほんまかいな。
そしてこの日、「ミヤネ屋」の中の「ニュース250」で、日本テレビが出したスーパーは、
「69歳で逝く」
で、ナレーションは、
「息を引き取りました」
でした。