新・ことば事情
6071「『ひっつく』と『くっつく』」
(2015年3月12日に書きかけました)
「ミヤネ屋」の本番前に、名物コーナー「愛のスパルタ料理塾」の原稿を、AD(アシスタント・ディレクター)が持って来て、質問しました。
「この『お鍋にひっつく』を『くっつく』に変えてもいいか?とナレーターさんに聞かれたんですけど・・・」
なるほど。どうだろ?そもそも「ひっつく」と「くっつく」の違いは何でしょうか?どちらも「つく」という動詞が共通で、その前に「接頭辞」として「ひっ」「くっ」が付いていると。「ひっ」の促音は、元は、
「引き」
ですよね。つまり、
「引きつく」
が、促音便で、
「ひっつく」
になったのでしょう。つまり、
「引き寄せたようにピッタリと付く」
のが「ひっつく」なのではないでしょうか。
一方の「くっつく」の「くっ」という促音の「前の形」は何なのか?うーん、思いつかない。これはもしかしたら、「くっ」ではなくて「く」なのではないか?それを強調した形で「促音便」になったのではないか?そうすると元の形は、
「くつく」
かな?えーい、辞書を引こう。『精選版日本国語大辞典』(電子辞書)で「くつく」を引いてみましたが・・・・載っていませんでした。ええい、じゃあそのまま「くっつく」を引いてみよう!・・・いきなり載っていました。
*「くっつく」=(「くっ」は「くい(食い)」が変化して接頭語化したものか)
これこれ!「~ものか」とは書いてあるけど、これでしょう、
「食いつく」
が促音便化して、「くっつく」。
なるほど、そうすると「ひっつく」と「くっつく」のイメージが、少し分化できました。
「ひっつく」のほうが、「引きつく」ということで、「付かれる側」が「引っ張った」感じ、それに対して「くっつく」は、「付かれる側」ではなく「付く側」が主体で「食い付く」んですね。どちらが主体かで変わって来るということか。いや、勉強になりました。