新・ことば事情
6067「不動産店と不動産屋」
(2016年3月25日に書きかけました。)
CMを見ていたら、ナレーションと文字(スーパー・テロップ)で、「不動産屋」ではなく、
「不動産店」
と出ていました。やはり「屋」という呼び名はテレビなど公の場では避けられていて、それが「不動産屋」にも及んでいるのかと思いました。「不動産店」なんですね。ま、「不動産」を売っているのだから、「店」でいいと思いますが。
一方、その3か月後の6月11日、NHKのお昼のニュースでは、
「熊本のパン屋が営業再開」
と、スーパー(テロップ)も、ナレーション読みも、
「パン屋」
でした。「さん」も付いていませんでした。今「屋」と「店」、せめぎ合いを見せているようです。
グーグル検索では(6月13日)
「不動産店」 = 65万9000件
「不動産屋」 = 64万9000件
「不動産屋さん」= 37万1000件
お!「不動産店」と「不動産屋」は、ほぼ同数なんですね!これは意外。一般的な会話で出て来る「不動産屋」や「不動産屋さん」のほうが多いのかと思っていましたが、「不動産」は毎日、買いに行ったりはしないので、そういう意味では、少なくとも「パン屋」「パン店」に比べると、なじみが薄いのかもしれません。その「パン店」「パン屋」ですが、
「パン店」 = 39万1000件
「パン屋」 =2710万0000件
「パン屋さん」 = 818万0000件
これは圧倒的に「パン屋」「パン屋さん」が多いですね。一般に話し言葉で使われるのは、やはりそうなのです。かしこまった言い方の「パン店」は、普通はまず出て来ない。それこそ「ニュース」ぐらいなんですよね、きっと。
そして、「不動産店さん」「パン店さん」とは言いませんね。一応、検索。
「不動産店さん」= 1160件
「パン店さん」 =1万0200件
でした。硬い表現の「店」と「さん」を合わせるケースは、やはり少ないようです。
同じようなケースでは、2016年2月16日の関西ローカルで、阪神百貨店で開かれていたの「質流れ品大バザール」のニュースを放送していました。その中では、
「質屋」
という言葉が使われていました。「質屋さん」のように「さん」が付いているのではなく。「質屋」と「質店」の区別はどうなんでしょうか?「話し言葉」か、「堅い(硬い)言葉」なのか?状況によるんでしょうね。そのあたりは「平成ことば事情1601質屋か質店か」に書きましたので、そちらもお読みください。
また、「○○屋」が「蔑称」であるかどうか?については、「話し手の意識」、つまり「文脈」によるんでしょうね。その判断は難しいですね。