新・ことば事情
6041「『崎』『碕』『埼』」
2016年2月、電車の中で見かけたポスターに、こんな灯台の名前が出ていました。
「出雲日御碕灯台」
この「御碕」の「碕」は、「石へん」です。普段見慣れた「山へん」の「崎」ではないのです。なぜでしょうか?
また、「岬」というのは「御崎」(あるいは「御碕」)からきたのでしょうか?
そうこうしているうちに3か月。2016年5月に、東京・小金井市で、芸能活動をしていた女子大学生が刺されるという事件が起きました。逮捕された京都に住む27歳の容疑者の男の名字は、
「岩埼(いわざき)」(岩崎友宏)
というものでした。見慣れた「山へん」の「崎」ではなく、「埼玉県」の、
「埼」
「土ヘん」でした。たしか、茨城県の、
「犬吠埼」
は、「埼玉県の埼」でした。それと同じですね。
「いわざき」と「濁る」のも聞き慣れません。大体、東日本の方が濁り、西日本は濁らさない傾向が強いと思うのですがね。ほら、「釣りバカ日誌」の主人公、「浜ちゃん」こと、
「浜崎伝助」
も、「福岡出身」という設定で、
「はまさき」
と濁らないのですよね。それを、上司が機嫌が悪くて怒鳴るときに、わざと、
「はまざき!」
濁ると、浜ちゃんは、
「ハマサキです 濁りません!」
と言い返すというのは、お馴染みのシーンですからね。この容疑者が京都(西日本)に住んでいるが「いわざき」と濁るのは、元々の出身(両親の出身地など)は「東日本」なのかもしれないなと思いました。
でも、九州でも「宮崎」は濁るけど「長崎」は濁りませんねえ・・・。
それにしても「岬」意味の漢字と思われる「崎」「碕」「埼」の区別はどうなっているのか?検索を懸けて見たらら、「海上保安庁 海洋情報部」のHPがトップに出て来ました。そこには、
『「埼」と「崎」はどうなってるの?』
というタイトルでこんなことが書かれていました。
www1.kaiho.mlit.go.jp/JODC/SODAN/faq/saki_saki.html
『海図に掲載する地名については、旧海軍水路部時代から海洋情報部が、独自に調査・検討して海図・水路誌等に採用していましたが、昭和35年(1960年)から海上保安庁と国土地理院が「地名等の統一に関する連絡協議会」を発足させ、地名の統一を図るための協議会を開き検討しています。
「埼」と「崎」のことですが、海図では海洋に突出した陸地の突端部の名称としての(Saki)は、おおむね土へんの「埼」を用いています。例えば、東京湾付近では地図帳などには野島崎・観音崎・剱崎と「山へん」で記載されていますが、海図には「土へん」で野島埼・観音埼・剱埼と図載しています。
土へんの「埼」は、陸地(平地)が水部へ突出したところを表現し、山へんの「崎」は本来の意味として山の様子のけわしいことを言い、山脚の突出した所を示しており、平野の中に突出した山地の鼻等を言う意味なので、海洋情報部では漢字の意味からも地形が判る土へんの「埼」を採用しています。
なお、「みさき」の地形を表わす名称には「埼」のほかに「岬」、「碕」、「角」、「鼻」があり、まれに「岬」を(Saki)と読む場合もあります。
海洋情報部は、明治時代の海軍水路部のころから、土へんの「埼」を海図に採用してきました。これは、埼、崎、岬で地形の意味を表現するために使い分けをして、海図の使用者である航海者が地名から地形が判断できるようにしていました。 国土地理院では、前身の陸軍陸地測量部が山へんの「崎」を使用していた経緯があるので、引き続き使用しています。』
そうだったのか!「海図」と「地図」で表記が違うのか!表記が違うということは、本来、地形も違うのか!知らなかったなあ。勉強になりました。
「碕」はどうなるのかな?