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『道浦TIME』

新・読書日記 2016_067

『繚乱』(黒川博行、角川文庫:2016、3、25)

大阪の直木賞作家、あの黒川博行氏のハードボイルドな、とても分厚い文庫本。600ページもあって840円(税別)は安い!読むのに1週間かかりました。

元警察官(暴力団担当)のコンビが、裁判所で競売にかけられる物件の「調査官」をやっていて、いろいろ調べて行く中に大変な出来事がいっぱい出て来る。600ページのうち400ページぐらいまでは、いろんな登場人物が出て来て、どんどん話が拡大していく。その様子は「山登り」のよう。そして、残りの200ページは山を一気に下って行く。ある「事件」をきっかけに、山頂からゲレンデを滑るように、広がった話が一気に収斂していくさまは心地よく、ここは一気に読める。

これだけの話を「ゼロ」から作れたらスゴイなあとは思うが、筋書きが「なんかどこかで聞いたことあるような感じがする」のは、バブルがはじけたころの「イトマン事件」をベースにしているからだと思われる。現実の「イトマン事件」では「末野興産」というのが出てきたが、ここでは「末松興産」。半分ぐらいカブっているようなネーミング。

また、出て来る場所が"関西"の私も土地鑑のある所ばかりなので、臨場感を持って読むことができた

「生レバー」を食べているシーン(328ページ)もあって、「ああ、当時は食べても良かったんや」と時代を感じる。この作品は2012年11月に、単行本が出てるんだけどね。

暴力団がらみの話だから、「シャブ(覚醒剤)」の話も出て来る(355ページ)。

それによると、

「普通、シャブの初心者が1回に射(う)つ量は0、025グラムほどだ。中毒が進んで耐性のできたものでも0、1グラムだろう」

「堀内が暴犯係だったころ、シャブの売人と客は何人も逮捕した。売人はシャブを0,1グラム単位に小分けにした"パケ(小袋)"を客に売る。パケの値段はそのときどきの相場と売人によって上下するが、3、4年前は0,1グラム入りで8000円から1万円、0,3グラム入りで2万円前後だった。ポンプ(注射器)は3000円で、上客にはタダで渡していた」(355-356ページ)

などと、知らなくてもいい知識まで教えてくれるが、この値段は、清原被告が買っていた値段とほぼ同じだなあと思った。

(☆4つ半)


star4_half

(2016、4、28読了)

2016年5月12日 19:25 | コメント (0)