新・読書日記 2016_072
『クラウド 増殖する悪意』(森達也、dZERO、2013、12、21)
最初に署名を読んだときに「クラウド」によって「悪意」が増幅されているのかと思ったが、そういう意味ではない、と著者が「まえがき」で書いている。帯には、
「善良な市民が正義を振りかざし、厳罰化を求める。大勢が因って集(たか)って一人を叩きのめす。メディアは抗(あらが)うことをやめ、萎縮し、何事もなかったかのようにふるまう、これが日本なのか、日本人なのか」
これを読むと、「なんて卑怯な人たちなんだ!」だと感じるが、世の中の風潮が、たしかにそんな色を帯びているのを感じる。
この本は2013年の12月に出ているので、もう2年以上前の本だが、ここに書かれた傾向は、更に悪いほうに進んでいる様に感じる。
ただ、確かに著者の指摘するのは「世の中の(人たちの)良くない流れ」だが、昔は「そうそう!」と思って読めたこの著者の文体が、ちょっと持って回ったように感じて、あまり好きになれない。もっとすっきり書いて欲しい気がした。著者の文体は変わっていないので、これは読み手である私の感じ方が変わったのだろう。
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