新・ことば事情
6025「映画『晩秋』の言葉」
平成ことば事情6024で書いた「秋刀魚の味」に続いて、もう一本見た小津安二郎監督の映画が、
「晩秋」
です。昭和24年(1949年)の作品ですから、今から67年前です。
これも笠智衆が主人公で「56歳」の役です。どう見ても、
「おじいさん」
です。「68歳ぐらい」に見えます。あと1年ちょっとで、私もその年齢(56歳)になるのに・・・。
その笠智衆のセリフで、
「おじさんだって、一生一代の嘘だったんだ」
というのがありましたが、「一世一代」ではなく、
「一生一代」
でした。娘が結婚しないから、まだ孫もいなくて、「おじいさん」ではなく「おじさん」です。見た目は老けてるけど。
昭和28年(1953年)に公開された「東京物語」のときの笠智衆の実年齢は、
「49歳」
でしたから、「晩秋」で「56歳」の役をやったときの実年齢は、
「45歳」
だったのか!すごい!20歳は老けて見える!
そのほか、気になった言葉は、
「あの子、今どきにしては旧式だから・」
「おまえの方が、ずっと旧式だ。」
これは他で書いたかもしれないけど「旧式」って、今は言わない。
それと、
「こないだのご返事ね。」
これは「お返事」ではなく「ご返事」という「御」の読み方が硬い。
また、「秋刀魚の味」でも出て来た、人を「ある」でいう言い方。
「いい人、あるんだけど」
主人公ののりこ(原節子)に縁談を勧める友人の言葉。
「こないだアメリカから来た、野球の。」
昭和24年10月には「サンフランシスコ・シールズ」が来日していますね。
その友人の言葉、
「ラージ・ポンポン」
これは「妊娠」して、いわゆる、
「ハラボテ」
状態を指してるんですね。中途半端に「ラージ」という英語が入ります。占領下の、
「オオキュパイド・ジャパン」
だったのですね、この時期は、まだ。また、
「(妊娠)4か月」
のことを、
「しかげつ」
と言っています。
「よんかげつ」
じゃないんですね。
色々な言葉が気になりました。