新・ことば事情
6024「映画『秋刀魚の味』の言葉」
伝説の女優・原節子さんが、去年9月に亡くなっていたことが、去年11月になって知らされましたが、それを受けて、DVDを借りて来て見た、小津安二郎監督作品。
「秋刀魚の味」
は、「昭和37年(1962年)」の作品でした。私は、当時1歳。
その映画の中で「おや?」と思った言葉をメモしました。
「先生、お孫さんはおいくたり?」
という言葉は、
「いくつ(何歳)ですか?」
の代わりに、
「おいくたり」
というのは、今は耳にしませんねえ。
また、主人公の笠智衆の中学時代の恩師役で「ひょうたん」というあだ名で呼ばれる東野英治郎。中学卒業以来40年ぶりに同窓会を開き、「ひょうたん先生」を招いた。会の後、先生を車で送るシーン。笠智衆の親友が運転する車で送るのですが、もちろん宴会の後ですから「飲酒運転」です・・・。昔はそういう時代でした。家に送って行くと、なんと「ひょうたん」の家は、「中華料理屋」でした。「中華料理屋」と言えば聞こえはいいけど、実際はカウンターと小さなテーブルしかない、
「ラーメン屋」
その帰り道での会話が、
「ひょうたんが『チャンそば屋』やってるって、知ってたのかな。」
この、
「チャンそば屋」
というのも、今は全く聞きませんねえ。
また、笠智衆が会社で、部下の女性社員に年齢を問うシーンがあります。今なら「セクハラ」「パワハラ」と言われます。
「君はいくつになった?サンか?シか?」
これは、
「23歳か?24歳か?」
と問うているのですが「20」を略して聞いています。また「24」を略して「ヨン」ではなく、
「シ」
と言っているところが注目です。
人に対して「いる」ではなく「ある」を使っているシーンも気になりました。原節子のセリフで、
「赤ちゃんのある人だっているわ。」
そして笠智衆のセリフで、
「好きな人でもあるんじゃないか」
と、これも「いる」ではなく「ある」でした。
映像で映る「お茶の間」の「卓袱(ちゃぶ)台」の上に置かれていて、ハッキリと分かるのが、
「アリナミン」「味の素」
これは、
「プロダクト・プレースメント」
でしょうか。また、飲み屋街の看板は、
「サッポロビール」
なのに、バーで飲んでいるのは、
「サントリー・オールド」
でした。