新・ことば事情
6006「停波」
2週間ほど前の、高市総務大臣の、
「放送局の電波を停止させることもありうる」
というふうに取れる趣旨の発言(答弁)をして論議を呼んでいます。その後、
「そういう意図ではなかった」
という発言もしているようにも見えますが、その関連のニュースを読んでいた、2月10日の日本テレビ「every.」の女性アナウンサーが、「電波が止まる」という意味の「電波停止」の略語、
「停波」
という言葉を、
「テ/イハ」
と「平板アクセント」で読んでいたので、違和感を覚えました。
私は、入社以来32年間、ずっーーと、
「テ\イハ」
と「頭高アクセント」で読んできたからです。周囲でもみんな「頭高アクセント」でした。それは「関西のテレビ局」だからでしょうかね?
これは辞書を引いてみなくちゃ!ということで、さっそく引いてみると、なんと、この言葉、『NHK日本語発音アクセント辞典』にも『日本国語大辞典』も、『広辞苑』も『新明解国語辞典』にも載っていないのです!
「停○」
という語構成の言葉は、他にどういうものがあるかを考えると、
「停止」(テ/イシ)
「停電」(テ/イデン)
「停車」(テ/イシャ)
「停滞」「(テ/イタイ)
「停泊」(テ/イハク)
などが思い浮かびますが、たしかに、これらのアクセントは全て、
「テ/イ○○」
と「平板アクセント」です。しかし、逆に、
「○○波」
という語構成の言葉を考えてみると、
「電波」(デ\ンパ)
「周波・秋波」(シュ\ーハ)
「音波」(オ\ンパ)
「電磁波」(デ/ンジ\ハ)
など、「平板ではないアクセント」ばかりです。特に「2文字」の、
「○波」
は「頭高アクセント」です。「波」ではありませんが、尾形光琳などの障壁画などの流派、
「琳派」(リ\ンパ)
も「頭高アクセント」で、
「流派」(リュ\ーハ)
「宗派」(シュ\ーハ)
も「頭高アクセント」です。
そして今回の「停波」は、「電波・停止」の意味の略語ですから、「停○」のアクセントパターンではなく、「電波」と同じ「頭高アクセント」の、
「テ\イハー」(テ\ーハ)
がふさわしいと思うのですが、いかがでしょうか?
2月17日の日本テレビ「ニュースゼロ」で、男性アナウンサーは、「停波」を、
「テ\イハ」
と「頭高アクセント」で読んでいました。
結局、今のところ「平板アクセント」で読んでいるのを聞いたのは、2月10日の「every.」の女性アナウンサーだけ、ということです。
あ、それと、実際の発音では「イ」は発音せずに「長音」で、
「テ\ーハ」
ですね。