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『道浦TIME』

新・読書日記 2016_027

『イスラム化するヨーロッパ』(三井美奈、新潮新書:2015、12、20)

 

 

読書日記026「メディアとテロリズム」に続けて読んだ。

6年の時を経て、「テロ」とどう向き合うのか、まだ答えは出ていない。

 

著者は読売新聞のパリ特派員だった。ちょうど任期を終えて帰国準備をしているときに、去年11月のパリのテロが起きた。

著者が過去に取材した、「イスラム国」に志願して一人で行ってしまった少女の家族の話や、フランス国内で、旧植民地・アルジェリアからの移民への差別、その息子たちの世代になって、フランス生まれの仏蘭西育ちのアルジェリア系フランス人が、やはり、差別を受ける現実。その中で、自らもフランス人にも拘わらず、「フランス」への憎しみの気持ちが育ち、テロリストになっていく「ホームグロウン・テロリスト」が生まれるまで。

「共存」を謳ったフランスの実験・挑戦は、果たして失敗してしまったのか?

ヨーロッパの他の国々より一歩先に「共存」の試みをしていたフランスでのテロは、他の国に波及していくのか?「国」の形とは?「共存」とは?について考えさせられる。

1998年に、サッカーの「フランスワールドカップ」を見に行った。その年は、地元・フランスが初優勝を飾り、シャンゼリゼ通りには100万人が押し寄せて、凱旋パレードをした。チームの主将は、アルジェリア出身の「ジダン選手」だった。チーム内で、「共存」が出来て、その後、国内もうまくいっていると思っていたのに・・・。

あれから20年近くたってこんな状況。次の希望は何なのか?ジダンは、去年末からスペインの「レアル・マドリード」の監督として、良い滑り出しを見せているが、スポーツと国民の生活は、やはり違うのだろうか。考えさせさせられる一冊。

 

 


star4

(2016、1、8読了)

2016年2月23日 18:58 | コメント (0)