新・ことば事情
5996「坊主頭か?丸刈りか?」
1月26日、架空の出張を繰り返して出張費用をだまし取ったとされる、元兵庫県議の野々村竜太郎被告を巡る裁判。去年11月の初公判は、異例の「すっぽかし」で、出廷しなかったので、この日の裁判が「初公判」でした。また逃げるといけないので、これも異例の、
「勾引状を発付」
して、身柄を前の日から押さえるという展開。
この日のヘアースタイルを指して、
「坊主頭」
という表現で「ミヤネ屋」では放送しました。
「坊主頭」は、「坊主(=僧侶)」をバカにしているように感じられる使い方の場面ではダメですが、絶対に使ってはいけない表現というわけではありません。「坊主」という言葉自体、「職業」や「僧侶本人」を指すのに使うのは避けたほうが良いですが、
「てるてる坊主・坊主頭・ネギ坊主」
などの言葉は、侮蔑的ニュアンスと結びついていないと思われるので、使ってもいいと思われます。
ただ、「高校球児」などは(僧侶ではないし)、
「丸刈り」
が妥当だと思いますし、「ネオナチ」のような連中は、
「スキンヘッド」
と呼んだ方が妥当でしょう。しかし、今回の野々村被告の場合は、法廷画を見て、
「坊主頭」
が妥当かと思ったので、それで放送しました。
しかし、読売テレビの夕方のニュース番組「かんさい情報ネットten.」では、
「丸刈り姿」
と表現。他社もほとんど「丸刈り」だったようです。
1月26日の夕刊各紙の表現は、
(読売新聞)髪を短く刈った野々村被告
(朝日新聞)頭を短く刈り込み
(毎日新聞)頭を丸刈りにし
(産経新聞)(見出し)丸狩り姿 (本文)丸狩り頭
(日経新聞)頭をそり上げ
でした。
翌1月27日の日本テレビ『スッキリ!!』では、サイドスーパーでは、
「スキンヘッド」
と記していました。同じ日のフジテレビ「とくダネ!」のサイドスーパーでは、
「丸刈り姿」
でした。
そして翌日の1月27日、今度は、危険ドラッグを吸い、隣人女性を切りつけた罪に問われた、いわゆる「しぇしぇしぇ男」こと田中勝彦被告の東京高裁での控訴審では、長髪だった髪を短く切って法廷に現れた被告の髪形を、この日の「ミヤネ屋」では、
「丸狩り」
と表現しました。(判決は「懲役2年4か月」。一審(懲役2年6か月)よりも「2か月」、短くなりました。)
「(形の上で)反省して髪を切った」という意味であるなら「丸刈り」でいいと考えたからです。
また過去のメモを検索してみると、私がニュース原稿の「犯人の容貌」に関して、初めて、
「スキンヘッド」
という言葉を目にしたのは、
「2010年8月17日」
でした。
「逃げた犯人の人着(にんちゃく)。ニュースでは初出?坊主頭でも、丸刈りでもない。丸剃り?スキンヘッドの訳語は?」
というメモが残っていました。
また、2008年3月19、茨城・土浦市で起きた8人殺傷事件の報道で、NHKは発生当初は、容疑者の金川真大・元死刑囚(2013年2月21日死刑執行)の髪形を、
「坊主頭」
としていて、翌日の朝のニュースから、
「丸刈り」
に変えていました。原則は「丸刈り」のようです。ただ、
「警察発表が『坊主頭』」
の場合には、初出では、それがそのまま原稿に出ることも、各社あるようです。