新・ことば事情
5992「ルーチンかルーティンかルーティーンか?」
2月5日の用語懇談会放送分科会で、フジテレビの向坂アナウンサーから出たテーマは、
『「ルーチン」「ルーティン」を「ルーティーン」とアナウンスする傾向について』
でした。向坂さんによると、
「『新聞用語集2007年版』では「ルーチン〔スポーツ関係では「ルーティン」とも〕」、
『記者ハンドブック第12版』(共同通信社)では「ルーティン」と記してあり、最新の主だった国語辞書の表記は以下の通りです。各社、統一などはされていますか?「ルーティーン」という公判を伸ばすアナウンスも、よく耳にするのですが。」とのことでした。 | ||
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三省堂 |
国語辞典 第7版 (発行:2014年1月10日) |
・ルーティ(ー)ン⇒ルーチンを参照 ・ルーチン:①決まりきった仕事。機械的な日常業務。 ②かたどおりの手順。慣例。 ③(コンピューターのプログラムの)一連の命令群。 ④(ふつう「ルーティン」の形で)シンクロナイズドスイミングの演技(テクニカル―、フリー―) |
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新明解国語辞典 第7版 (発行:2012年1月10日) |
・ルーチン:①(routine=「踏み固められた道」の意のフランス語に由来)(決まっている)日常(の業務) ②(コンピューターで)プログラムの中のひとまとまりの作業をする部分。ルーティン。ルーティーン。 |
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大辞林 第3版 (発行:2006年10月27日) |
・ルーチン(ルーティーン、ルーティンとも):①きまりきった仕事。日々の作業。ルーチンワーク。 ②コンピューターのプログラムの部分をなし、ある機能を持った一連の命令群。 ③「ルーチン競技」に同じ。 ・-競技:シンクロナイズドスイミングで、音楽に合わせて演技し、技術・同調性・演技構成などを競うもの。ルーチン。 |
小学館 |
新選国語辞典 第9版第4刷 (発行:2013年1月1日) |
・ルーチン(=ルーティン):①きまりきった手続きや仕事。日課。 ②コンピューターのプログラムで、ひとまとまりの機能をもった命令群。 |
大修館書店 |
明鏡国語辞典 第2版第6刷 (発行:2015年4月1日) |
・ルーチン:①いつもの手順。また、日常の仕事。日課。 ②コンピューターのプログラムの中で、ある機能を実行するための一連の命令。「ルーティン」とも。 |
岩波 |
岩波国語辞典 第7版新版第4刷 (発行:2015年1月15日) |
・ルーチン:①日常の仕事などで、型どおりの決まり切ったもの。 ②コンピュータのプログラムの、ある機能を果たすひとまとまりの部分。中心的な機能を果たすメーン ルーチンと、下請け的な仕事を受け持つサブルーチンとにわけられる。 |
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広辞苑 第6版第5刷 (発行:2014年2月21日) |
・ルーチン:①きまりきった仕事。 ②ある機能を持った一連の手順。コンピューターのプログラムなどでいう。 |
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それに対する各社の回答は、
(NHK)「決まり」はない。ハンドブックは「ルーチン」と書いてあるが、「アクセント辞典」に記載はない。ことし4月~5月発行予定の「新しいアクセント辞典」では、「ルーチン・ルーティン・ルーティーン」の3つとも「読み」を載せる予定。「表記」も3通り認める。スポーツコーナーでは「ルーティーン」が多い。
(TBS)「ガイドブック」では、「ルーチン(ルーティン)」しかし、スポーツニュース部に聞いたところ、表記も読みも「ルーティーン」が多いとのこと。表記のルールがあることを知らない人も多いと思う。「ルーティーン」と伸ばす人も「ルーティンワーク」となった場合は「ルーティン」と短くして、伸ばさない。ラグビーの五郎丸選手で話題になる前は、イチロー選手の話題のときに出て来たぐらいの言葉。
(日本テレビ)情報番組担当者は「ルーティーン」と伸ばして言っている。読み方の統一はしていない。表記は「用語集」で「ルーティン」と短く書くことになっている。
(テレビ朝日)「ルーチン」は使っていない。「ルーティン」か「ルーティーン」。五郎丸選手のは「ル\ーティン」と言っている。ゴルフ中継担当の森下桂吉アナウンサーに聞いたところ、ゴルフ中継では「ショットまでの尺(時間)の長さによって、長くなったり短くなったりする」とのことでした。
(テレビ東京)表記は「ルーティン」。アナウンス部で聞いたところ、無意識のうちに「ルーティーン」と長くなっているのではないか?と。
(MBS)「ルーティン」と書いて「ルーティーン」と読んでいる。ただし「ティーン」は伸ばしすぎない程度に。原語の英語では「ティ」の所にアクセントがあるので、伸びたように感じるのではないか。
(ABC)表記は「ルーティン」。アナウンサーは「ルーティーン」と伸ばして読むことが多い。「ルーチン」は「IT用語の雑誌」には出て来る。
(KTV)「ルーティーン」と書かれてあれば、そのまま伸ばして読んでいる。五郎丸選手の場合は「おなじみの、あのポーズ」などと言う場合も。
(ytv)アナウンス部で20人ほどに「読み方」を聞いたところ「ルーティーン:ルーティン」=「3:1」ぐらいで、伸ばすほうが多かった。先日、30年ぶりぐらいに復活したラグビー中継を担当したアナウンサーも「ルーティーン」と伸ばすとのことだった。昔「ローティーン」と聞き間違えないように「ルーティン」と短く言うと、聞いた覚えがある。
先日の「ミヤネ屋」では、表記は「ルーティン」と短く『新聞用語集』に合わせ、読み方は「自由に読んでください」と、ナレーターさんに指示した。
(TVO)テレビなので「ごらんのポーズ」のような言い方をする。また「中小企業の社長のルーティン」などと出て来ることもある。きょう、新幹線で東京に来る時に読んだ「週刊文春」の甘利前大臣の記事には、「ルーティン」と短く書いてあった。
(WOWOW)「ルーティーン」が多い。かつての「イチロー」の中継の時によく出て来た。ただし、さきほどTBSの斎藤委員が言った通り「ルーティンワーク」の場合は、伸ばさない。
(共同通信)弊社「記者ハンドブック」は1994年3月の「第7版」で、それまでの「ルーチン」から「ルーティン」に変更して、現行の「第12版」でも、そのまま。
(新聞協会・伊藤専門委員)「新聞用語集」を作った時には、シンクロナイズドスイミングの「フリー」と「ルーチン」で出て来た言葉。アナウンサーは、当時から「ルーチン」とは言わずに「ルーティン」あるいは「ルーティーン」と言っていた。
といったものでした。
全くもって、外来語の表記・発音の問題は難しいです!!