新・ことば事情
5989「調進する」
先日の東京出張の際、新幹線の中で、京都駅で買った駅弁(「鶏の照り焼き 京のおばんざい弁当」)を食べようとして見た包み紙に、こんな文字があるのが、目に留まりました。
「ごはんも具材も早朝より調進いたしております。」
この文章の中の、
「調進」
という言葉、初めて見ました。弁当を作っていたのは「京都・祇園なかがわ」というお店。料亭のようです。
「調進」を辞書で引いてみましょう。
「精選版日本国語語大辞典」に載っていました。
*「調進」=ととのえて目上の人にさしあげること。注文に応じて物をつくり、貴人などに納め届けること。一般に物を作って提供することをていねいにいう。調達。
用例は「明衡往来」(11世紀中ごろか)からでした。
「デジタル大辞泉」にも載っていました。
*「調進」=注文に応じ、品物をととのえて差し上げること。調達。(例)和菓子を調進する。
ほう、なんだか、
「宮内庁御用達」
みたいな感じですね。
「謹製」
というのは目にしたことがありますが、「調進」は知らなかったなあ。
ほかの辞書も引いてみると、「明鏡国語辞典」にも載っていました。
*「調進」=注文の品をととのえて納めること。調達。(例)引き出物の菓子を調進する。
「三省堂国語辞典」にも載っていましたが、<文>という印があったので「文語」扱いなのですね。
*「調進」=<文>注文に応じてつくること。(例)商品券調進・菓子調進所
普段は見慣れない言葉も、こうやって駅弁の片隅に生きていると。「京都らしい言葉」ではありました。