新・ことば事情
5990「人間ドッグ」
2月9日、俳優の渡辺謙さんが初期の胃がんが見つかり、既に手術をしたというニュースが入りました。各メディアには渡辺謙さん自筆のファクスが届きましたが、縦書きのその文面は、大変達筆で力強いものでありました。「ミヤネ屋」でも、その文面をご紹介したのですが、その中で1か所、「おや?」と思ったところがありました。それは、「胃がん」が、妻の勧めで行った、
「人間ドッグで見つかった」
という箇所です。
「人間ドッグ」
だと、
「人間犬」
になってしまいます。これはやはり、
「人間ドック」
と、語尾の「ク」は濁らないですよね。謙さんはツイッターの文章も
「人間ドッグ」
になっていました。「ミヤネ屋」では、「吹き替え」もその文面を「テロップ」で出す時も、
「人間ドック」
と濁らないほうに直して、放送させてもらいました。
「濁る」のと「濁らない」のが逆になる傾向は、比較的「関西人」に多いように思います。野球の「送りバント」を「送りバンド」と濁って「ベルト」のようになったり、寝る「ベッド」を「ベット」と濁らないで「賭け事」になったり(ベットの代金は"別途"請求)、カバンの「バッグ」を「バック」と濁らずに「背中・後ろ」になったり。
「バックを前から取られた」
なんて言うと、「前」なのか「後ろ」なのか、迷いそうです。
謙さんは、熱狂的な「阪神タイガースファン」でも知られていますから、もしかしたら、そういう「関西風の言い方」が身に着いていて、「ドック」を「ドッグ」と書いてしまったのかもしれないなと思ったのでした。