新・ことば事情
5972「覚せい剤か?覚醒剤か?」
2月2日夜、元プロ野球選手の清原和博容疑者(48)が、覚醒剤所持の現行犯で、警視庁に逮捕されました。2年前の『週刊文春』の記事以来、黒い噂は付きまとっていたものの、本当の本当に捕まるとは!しかも、プロ野球キャプイン間もないこの時期に、というのは驚きでした。
これを報じた2月3日のスポーツ紙各紙の「覚醒剤」の表記は、
「覚せい剤」「覚醒剤」
の2種類がありました。
【覚せい剤】=サンスポ・スポニチ・デイリー
【覚覚醒剤】=ニッカン・報知
実は、2010年11月までは、「醒」の字が「表外字」(=常用漢字ではない)だったために、新聞も放送も、
「覚せい剤」
と「せい」を平仮名で書いていました。しかし、2010年11月30日に「改定常用漢字表」が発表されて、そこに「醒」の字が入ったので、各社漢字で、
「覚醒剤」
と書くようになりました。読売テレビでも、そうしています。ただし、
「覚せい剤取締法」
という「法律名」は、今田に平仮名で書いた「交ぜ書き」の「覚せい剤」なので、
*「薬物名」=覚醒剤(を所持していた疑い)
*「法律名」=覚せい剤(取締法違反)
という「書き分け」を強いられているのです。私は、常用漢字の改定があったら、速やかに法律名の漢字表記も自動的に変わるのだと思っていたのですが、そうではなく、表記を変えるのも「法律改正」に当たるようで、
「内容が変わらないのに、表記を変えるだけのためには、改正は行わない方針」
のようなので、こんな中途半端なことになっています。
それにとらわれずに、「読売新聞」と「朝日新聞」は、
「実質的には『覚醒剤』と書けるのだから、法律名も漢字で『覚醒剤取締法』と書く」
という方針で、「薬物名」も「法律名」も全部漢字で、「覚醒剤」と書いています。
だから、恐らくスポーツ紙も「朝日系」の「日刊スポーツ」と「読売系」の「スポーツ報知」は、漢字で「覚醒剤」と書いているのでしょう。
他のスポーツ紙が、なぜ「覚せい剤」と「せい」を平仮名で書くのかは、わかりません。
ところで、"清原選手"といえばプロ入り間もない時期に、「警察庁作成のポスター」に登場したことがありました。その際のポスターの文言は、
「覚醒剤打たずに、ホームラン打とう!」
という衝撃的なものでした。その標語どおりにしていれば良かったのに、順番が逆になってしまって、
「ホームラン打たずに、覚醒剤を打って」
に逮捕されてしまった、清原容疑者・・・。
覚醒剤を所持・使用するというのは、反社会的な行為で犯罪です。もちろん悪いことですが、「番長」と呼ばれる「悪ガキ」風の風貌でありながら、実は気の弱い一面も垣間見える彼が、なぜそんなことに手を染めなければいけなくなったのか。彼の「ドラフト」からの30年を考えると、可哀想な気もします。
「48歳」と言えば、もう十二分に「いい大人」ですが、「心の中の悪い鬼」を早く追い出して、更生してほしいです。