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『道浦TIME』

新・読書日記 2016_025

『怖いクラシック』(中川右介、NHK出版新書:2016、2、10)

 

 

著者の中川さんから頂きました。ありがとうございます。それにしてもすごい筆力。次々と本を出されます。

この本は、クラシックの「8つの怖い面」で「主に9人の作曲家」にスポットを当てている。

「第一の恐怖」は「父」。父のプレッシャーの中から、数多くの心地よい音楽を紡ぎ出した「モーツァルト」の「怖い音楽」とは。

「第二の恐怖」は「自然」。自然の中の風景、その怖さを発見した「ベートーベン」。

「第三の恐怖」は「狂気」。音楽家の子ではない音楽家「ベルリオーズ」の、ベートーベン+ゲーテの世界「幻想交響曲」。

「第四の恐怖」は「死」。「葬送行進曲」に代表される「ショパン」の死のイメージ。

「第五の恐怖」は「神」。「ヴェルディ」は、神へ捧げるための「宗教音楽」を「コンテンツ」として確立させた。

「第六の恐怖」は「孤独」。これは正に「近代的・現代的な怖さ」であろう。ラフマニノフとマーラーを取り上げている。

「第七の恐怖」は「戦争」。これも「近代の戦争」、総力戦の恐怖。そして「ヴォーン=ウィリアムズ」の戦争を題材にした音楽の世界と時代。

最後の「第八の恐怖」は、「国家権力の恐怖」。戦争が終わった後にやって来た、ソ連の社会主義体制・スターリンの粛清の中で、言いたいことを言えない、表現したいことを表現できない中で、「隠喩」として表現していく音楽家「ショスタコーヴィチ」。

時代の流れと音楽家の生き方を通じて、歴史を学ぶことが出来る一冊。読んだ後は、当然、ここに出て来る音楽を聴きたくなります。一番良いのは、その音楽を聴きながら読むことですね。(119ページ真ん中の「七十年数年後」は、「年」が一つ多い。誤植ですね。「七十数年後」が正解。増刷では直してくださいね!)

 

 


star4

(2016、2、15読了)

2016年2月22日 12:28 | コメント (0)