新・読書日記 2016_011
『ガザ~戦争しか知らないこともたち』(清田(せいた)明宏、ポプラ社:2015、5)
今年1月5日の「日経新聞」夕刊1面のコラム「あすへの話題」で、前・厚労省事務次官の村木厚子さんが「生まれ変われたら」というタイトルで書かれていたコラムを読んだ。村木さんは去年10月に、37年余り勤めた厚生労働省を退職したとのこと。37年余りの間に2度の産休、交通事故での休業、そしてご存じのように冤罪の裁判中の起訴休職と、何度となく職務を中断されながらも、定年まで勤め上げた。その村木さんが紹介していた「写真絵本」が本書だ。著者の清田さんは、村木さんと高知大学の同窓で医師で、先日、会った際に、この本の売り上げがガザの子どもたちのためにも使われていると教えられたという。医師である清田さんの、
「医療なんて、平和のないところでは無力だと思い知った」
という話はズシリと重かった、と村木さんは記す。
「裁判の被告」から厚労省に戻って、事務次官にまで上り詰めた村木さん。退職後に当然「永田町」界隈から「出ませんか?」なんてお誘いがあることだろう。でも、みんな断っているんだろうなそれを窺わせるように、こう記している。
「政治家になろうとは全く思わないが、政治は大切にしたい。」
(これで、ことし7月の参院選に出たら、ビックリしますけど)
そして、英国首相の回顧録に、
「私が尊敬する人は母です。母は立派な市民でした。」
とあるのを読んで、
「生まれ変わらなくても、生まれ変わっても、よき市民になりたいと思う」
と結んでいる。
このコラムを読んで、本書を取り寄せたのだ。
思っていたよりも大判の写真集で、日本からは全く距離的にも心理的にも遠い「ガザ」の生活が、「鳥の目」ではなく「人の目」で写されている。爆撃で壁が壊れてしまった家に住んでいる子ども達。描く絵は、「戦争の絵」だ。その昔、「戦争を知らない子ども達」というフォークソングが流行したが、ガザの子ども達は「戦争しか知らない子ども達」なのだ。それでも、明るい笑顔で生きている。「平和」ということについて、改めて考えさせられる。