新・ことば事情
5969「失笑」
最近、
「失笑」
という言葉の使い方が間違っているという指摘を耳にします。
『文化庁国語課の勘違いしやすい日本語』(文化庁国語課・幻冬舎)という本の86ページにも、
「『失笑する人』は笑っているか」
という項目があり、
「平成23年度の『国語に関する世論調査』で、『彼の行為を見て失笑した』という例文を挙げ、『失笑する』の意味を尋ね」
たところ、
「笑いも出ないくらいあきれる」=60,4%
「こらえ切れず吹き出して笑う」=27,7%
だったと記されています。そして、
「『失笑』は本来、笑いを抑えることができず、噴き出してしまう様子を言ったもの」
と書かれています。(前半の文化庁の調査は「吹き出して」で、この本は「噴き出して」と「ふき」の漢字が「吹」「噴」と違うのは、わざとかな?それとも気付かなかったのかな?)
『三省堂国語辞典・第7版』を引いてみると、「失笑」の意味は、
「(相手にあきれて)思わず、ふっと笑いをもらすこと。またその笑い。(例)まわりから失笑がもれる・失笑をさそう」
とありました。
そして「失笑」を使った慣用句で、
「失笑を買う」
という言葉があり、その意味は、
「(おろかな言動を)笑われる」
です。「失笑」を単独で使う場合もこの「失笑を買う」のニュアンスで使うことも多いのではないでしょうか?『文化庁国語課の勘違いしやすい日本語』にも、
「失笑が漏れる」「失笑が広がる」
といった「あきれる」状態で「失笑」が使われることも多いことから、
「笑いも出ないくらいあきれる」
の意味で使う人が多いのではないか?と書いています。その通りだと思います。
「失笑」は「吹(噴)き出して笑う」とはありますが、「吹(噴)き出した」際に「笑い声」が同時に出るとは限りません。「吹(噴)いた状態」では「笑い声」は出ないのではないでしょうか?まず「吹(噴)いて」から、その後に「笑い声」が出るのではないか?とも思います。また、あまりにも呆れた場合は「吹(噴)き出した」段階で笑う気力もなくなることもあるでしょう。そう考えると、
「笑いも出ないくらいあきれる」
という意味での「失笑」も、あながち間違いでもないのではないか?と思うのですが、皆さまはどうお考えでしょうか?「失笑」してませんか?