新・ことば事情
5957「安打製造機」
1月18日、2016年の「野球殿堂表彰者」の発表が行われたと、1月19日の読売新聞が報じていました。
今回、「プレーヤー部門」では、工藤公康投手(現・ソフトバンク監督)や斎藤雅樹投手(現・巨人二軍監督)が、そして「エキスパート部門」では、通算2314本のヒットを放った、
「榎本喜八選手(故人)」
が選ばれました。私などは、名前は存じ上げていますが、その現役時代をリアルタイムで知っているというわけではありません。その榎本選手の異名(ニックネーム)が、
「安打製造機」
であったと、読売新聞は報じていました。これも聞いたことがあります。のちに、張本勲選手やイチロー選手なども「安打製造機」と呼ばれましたが、その「初代」が、榎本選手だったのです。しかし、
「人間を機械にたとえる」
と言えば思い出すのは、数年前に、
「女性は産む機械」
と言った大臣。あの際は、
「人を機械にたとえるなんて!」
と大変なバッシングを浴びました。しかし「安打製造機」は、バッシングを受けません。なぜでしょうか?
それはきっと「褒め言葉」として「機械」が使われているからでしょう。
当時は「機械」の地位が高くて、
「機械のようだ」
という表現は、
「人間業ではない」「常人には到底できない」
という「プラスの意味合い」だったのでしょうね。それが現代では、
「それ(同じこと)しかできない」「非人間的」「血の通わない」「冷たい」
などという「マイナスの意味合い」で使われてきたので、バッシングされたのではないでしょうか。
今回、改めて「安打製造機」という言葉に接して、「機械」に対する我々のモノの見方が、この半世紀ほどで変わったのだなということを感じる
「良い機会」
になりました。