新・ことば事情
5956「速度を落として運転」
大寒波がやって来ました!(1月20日)
暖冬と言われた今年、ようやく「冬」です。いきなり、ガッと!です。
名古屋でも雪が8センチ積もり、名古屋駅前から中継をしていました。その中で、交通機関への影響として、中京テレビの女性アナウンサーが、こうしゃべっていました。
「東海道新幹線は、速度を落として運転しています。」
また画面のスーパーも、
「新幹線=速度を落として運転」
と出ていました。この表現ですが、以前は、
「徐行運転」
という言葉を使っていました。しかし、本来「徐行」とは、
「ブレーキをかけたら、すぐに止まれるスピード」
を言います。ふだん時速「300キロ」で走っている新幹線にとっては、たとえば「120キロ」というスピードに落としたとしても「徐行」だということなのでしょうが、一般的には、
「特急の最高速度」
ですし、自動車が一般道路をこのスピードで走ったら、間違いなく捕まります。
そこで、10年以上前に、新聞用語懇談会の放送分科会で、
「この場合の『徐行』という表現は、おかしいのではないか?」
と問題提起をしたことがあります。それを受けて、放送分科会から出ている『放送で気になる言葉2011』(76ページ)でも、新幹線などで「120キロ」にスピードを落としての運転を「徐行」と表現すべきでないとして、
「120キロまでスピードを落として」
等の具体的な表現にすべきだと記してあります。
その後に見た「テレビ朝日」のお昼のニュースも、「NHK」のお昼のニュースもともに、
「速度を落として運転しています」
と言っていました。ようやく、テレビニュースの現場でも、その表現が浸透して来たかと、ちょっと、うれしく思いました。