新・読書日記 2015_185
『国家の暴走~安倍政権の世論操作術』(古賀茂明、角川oneテーマ21:2014、9、10第1刷・2014、10、25第3刷)
去年(2015年)の初め頃、テレビ朝日の『報道ステーション』を降板する際に「I am not ABE」と書いたフリップを掲げて、司会の古舘さんと生放送で口論になった人、という印象が今は強いが、本書はその"事件"の4か月ほど前に出版されている。ここに書かれているような思いが高まり、それが「番組降=ラストチャンス」というタイミングで、ついに爆発したのかなあと思いながら、今頃、読んだ。
本書は、2014年7月に「集団的自衛権の行使」を内閣決定したことを受けて「安倍政権=国家」が暴走を始めたという思いによって書かれている。そしてこの「内閣決定」に際して、国民がそれほど抵抗しなかったことが、サブタイトルにあるように「安倍政権による世論操作」によるものであると説く。帯には「安倍政権による"軍事立国"化を食い止めよ!」と大きな文字で、一部赤字で強調されて記されている。
序章「加速する暴走」には、集団的自衛権説明を、パネル(フリップ)を使って国会で説明する安倍首相の様子を指して「『国民は愚かだ』という一貫した安倍内閣の哲学に支えられた戦略だ」と糾弾。さらには「『愚かな国民に迎合する、愚かなマスコミ』という冷徹な読み」もあり、「安倍総理を支える経産省中心の官僚達の考え方が、みごとに反映されたといってもよい」と指摘している。序章はちょっと過熱気味だが、それ以降の章では冷静に、安倍首相の政権運営の問題点と、本来進むべき方向性を示していると思う。中でも国家安全保障会議(NSC)の存在に危険性を感じる。安倍首相は「原則(ルール)があるから暴走はせず大丈夫」と説得するが、たとえ「ルール違反」を犯しても「例外規定」によって開き直れるからコワイという指摘は、その通りだと思った。
雇用政策に関しては、「サステナビリティー」の考え方を主張。安倍政権の雇用に関する主眼は「解雇をしやすくすること」だと言い切る。このあたりは、異論もあろう。しかし、全体としては、議論のたたき台になりうると感じた。