新・ことば事情
5931「エゴい」
街で前から歩いて来た若者3人組。その中の一人が、すれ違った時に口にした言葉が、耳に残りました。
「それは、エゴいなあ」
この、
「エゴい」
というのは初めて耳にした言葉です。
「エグい」
は、聞いたことがあるけど。恐らくですが、十中八九、この「エゴい」は、
「エゴイスティックな人(行動)」
のことを指して言うのでしょう。「形容詞」の終止形は「い」なので、
「『い』を付けると『形容詞』のようになる」
という造語法はありますね。最初に書いた「エグい」は「エグみ」「エグさ」の語幹に「い」を付けて「エグい」でしょう。それとは別に、「真ん中を省略して、最初からそういう1語の形容詞」のように見せるものもあります。
「キショい」
などは「気色悪い(キショクワルイ)」の「ク・ワル」を省いて「キショい」になっていますし、
「キモい」
の場合も「気持ち悪い(キモチワルイ)」の「チワル」を省いて「キモい」になっています。今回の「エゴい」の場合は、「エゴイステック」の後半の「スティック」を省略しているのでしょうか?普通だと「『い』で終わる形容詞」にはならずに、
「エゴイステックな」
と「『な』を付けて形容動詞」になるような気がするんですが、最近は何でも「形容詞」にするんでしょうか?これは、もう少し調べると面白そうだぞ。
ちなみにグーグル検索(12月21日)では、
「エゴい」= 3820件
でした。「い」を「イ」に換えると、
「エゴイ」=15万0000件
当然、この中には元の単語である「エゴイスティック」も入っているから、多いんですね。「エゴい」のほうは、トップに出て来た「日本俗語辞書」というサイトによると、
「エゴい」=エゴいとは、自分勝手・自己中なこと。【年代】平成時代【種類】若者言葉。【「エゴい」の解説】エゴいとは心理学用語で利己主義を意味するエゴイズム(egoism)、利己主義者を意味するエゴイスト(egoist)、更にこれらを略したカタカナ語であるエゴを形容詞化したものである。以前から使われていたが、特に2007年辺りから若者の間で普及。自分勝手、自己中、わがままといった意味で使われる。
とありました。「2007年当たりから」か。もう8~9年も経っていたとは!全然、気付かなかった。また、「ヤフー知恵袋」では、2011年7月4日に、
「若者言葉になるのでしょうか。エゴる、エゴられる、エゴいです。という日本語はどういう意味合いになるのですか。」
という質問が出されており、
「エゴ = エゴイズムやエゴイストの略です。すなわち、わがままや、わがままな人の事を指すのでしょうね」
というのが「ベストアンサー」に選ばれていました。2000年代前半に流行っていた「自己中」の「形を変えた言葉」なのかもしれません。いや、「自己中」より「エゴい」のほうが、他人に迷惑をかけそうな感じが、私はします。
いずれにせよ、「エゴい」「キモい」「キショい」といった言葉は、
「悪い意味のもの」
として使われています。その意味では、直接、その相手に悪口を言うのではなく、
「隠語」
的に、コッソリと仲間内で悪口を言う際に使う「新語(略語))にして、他の人には意味が分かりにくくする、
「一種の婉曲表現」
なのかもしれませんね。と書いた後に、『三省堂国語辞典』の編纂者の飯間浩明さんのツイッターを見ていたら、
「形容詞にはプラスの意味のものが少なく、大抵がマイナスの意味」
とあり、「そうだったのか!」と、合点がいきました。そもそもの形容詞の性格が、そうだったのか。