新・ことば事情
5886「拡声器か?拡声機か?」
8月10日、北朝鮮と韓国の軍事境界線で、韓国軍が約11年ぶりに巨大な「拡声き」を使った「宣伝放送」を再開したというニュース。(その後の南北高官の話し合いで中止されましたが。)
新聞各紙を見て見ると、
*「拡声器」=産経・日経・報知・日刊・デイリー・サンスポ
*「拡声機」=読売・朝日・毎日
でした。「き」の漢字が違ったのです。基本的には、
「大きな物=『機』」「小さな物=『器』」
ですが、今回の「拡声『き』」は、
「小さい物の集合体」
ですので、どちらでも間違いとは言えないような「き」がしました。
「日本テレビ」は「拡声器」だったので、今回、読売テレビの「ミヤネ屋」では、それに従って、
「拡声器」
で放送しました。
ちょうどその宣伝放送が、何年か前に中止されたときの記事(2004年6月17日付・読売新聞と毎日新聞)をスクラップしていました。「拡声き」が大きくて、写真が面白かったから切り取っていたのです。2004年の記事でも、「読売」と「毎日」は、
「拡声機」
と「機」を使っていました。
(2015、9、4)
(追記)
9月に行われた新聞用語懇談会放送分科会で、このテーマを議題に出したところ、各社からこんな意見が出ました。
*「拡声機」=NHK、日本テレビ
*「拡声器」=フジテレビ
(日本テレビ)「ミヤネ屋」さんは「日本テレビにならって『拡声器』にした」ということだが、日本テレビは「拡声機」。もしかしたら初出の「ストレイトニュース」で「拡声器」と出てしまったのかもしれない。
(NHK)「大きい・小さい」ではなく、「器」は「単純な原理で動くもの」、「機」は「複雑な原理で動くもの」。今回のケースは「複雑」なので「拡声機」。
(読売新聞)『新聞用語集2007年版』の「機・器」の項目の用例には「拡声機」で載っている。
ありゃ。「新聞用語集」に載っていたのか。気付きませんでした。日テレさんも、後で変えていたのか。これも気付きませんでした。
(2015、11、5)